「90歳の父親が亡くなる前に」と生前相続の相談に来られた50代の誠(まこと)さん。この歳になって初めて、自分たち兄弟が父親の再婚後の子であり、前妻との子どもの存在を知って困惑していました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)に寄せられた相談を元に生前相続についてみていきましょう。
父親の生前相続対策の相談に
誠さん(50代・男性)が父親の相続対策について、ニュースで紹介された記事を読んで、相談に来られました。
父親は昭和ひとケタ生まれで90代。自宅で内科医院を経営してこられました。90歳まで現役で医院を続けてこられましたが、受付や事務を手伝っていた母親が先に亡くなってしまい、医院は閉鎖して、現在は一人暮らしをされています。
子どもは長男の誠さんと弟で、2人ともドクターになりました。誠さんは近くで開業しており、弟は大学病院に勤務しているといいます。父親の相続対策は兄弟ふたりなのでそんなに難しいことはないと思っていたところ、大きな問題が発覚したのです。
父親は再婚していた。先妻の子どもがいる!
母親が亡くなったときは預金だけでしたので、相続税の申告も不要で、父親が手続きを済ませました。けれども父親の場合は、内科医院もある自宅と近くに駐車場、伊豆の別荘、預金など合わせると基礎控除は超えるはずです。
誠さんも、弟も、父親に預金や不動産なども整理して、相続対策をしてもらいたいと、父親と話をする機会を作りました。
その話の中で、父親から「母親とは再婚で、前の結婚のときの子どもが1人いる」という話をされたのです。
誠さんも弟も、いままで父親からも母親からもそんな話は聞いたことがなく、まさに青天の霹靂。あらためて父親の戸籍の附表を取って確認したところ、父親のいう通り父親は再婚で、先妻との間に長男が生まれていることが判明したのでした。
異母兄弟とは会ったこともない!
父親からいままでそんな話を聞いたこともなく、誠さんも、弟も、戸籍上の異母兄弟とは会ったこともありません。
父親は誠さんが生まれる前に離婚しており、すでに60年前。離婚後、その子は母親が引き取りましたので、父親ですらその間会ったこともなく、どこで暮らしているかもわからないといいます。
父親は自分の過去を知られたくなかったのか、そんな話は一切口にすることはありませんでした。だからといって戸籍は消すことができないため、その先妻の子どもも相続人となるのです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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