(※写真はイメージです/PIXTA)

2月20日、連邦最高裁判所は、トランプ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠として広範な関税を課した措置について、法定権限を逸脱しているとの判断を示しました。本判決は、米国および世界の経済ファンダメンタルズ、ならびに資本市場に重要な影響を及ぼす可能性があります。

※本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社が2026年2月24日に配信したレポートを転載したものです。

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Quick Thoughts

スティーブン・ドーバー、CFA
ヘッド・オブ・フランクリン・テンプルトン・インスティテュート

ラリー・ハザウェイ

グローバル・インベストメント・ストラテジスト
フランクリン・テンプルトン・インスティテュート

 

2月20日、連邦最高裁判所は、トランプ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠として広範な関税を課した措置について、法定権限を逸脱しているとの判断を示しました。本判決は、米国および世界の経済ファンダメンタルズ、ならびに資本市場に重要な影響を及ぼす可能性があります。

投資への示唆

市場は概ねややポジティブな反応を示しています。そのロジックは明快で、関税は税金であるという事実です。関税は、(1) 投入コストの上昇を通じて企業の利益率を圧迫し、(2) 最終価格の引き上げにより需要を抑制し、あるいは (3) その双方を同時にもたらし、サプライチェーンの混乱や不確実性の高まりといった二次的影響を与えることも少なくありません。

 

・まず恩恵を受けるのはリスク資産です。株式市場は上昇し、クレジット・スプレッドは縮小しています。関税撤回は一種の財政緩和とみなされ、成長および企業収益にとって支援材料になるとの見方が背景にあります。


・インフレリスクが緩和する局面においても、金利や米ドルが上昇する可能性はあります。成長見通しやリスク選好の改善を背景に、利回りや米ドルが上昇する一方で、関税撤回が財価格のインフレ圧力を同時に軽減することは矛盾しません。今後数カ月でインフレ抑制効果が優勢となれば、FRBの政策上のトレードオフは改善し、景気が弱含む場合や金融環境が引き締まる場合において、緩和余地が拡大する可能性があります。


・セクター間の格差も重要になるでしょう。関税緩和の恩恵は一様ではありません。輸入依存度の高い企業や海外からの投入材に依存する産業は、最も直接的なマージンおよびコスト面での改善が見込まれます。一方で、他のセクターも需要回復や信頼感の改善を通じて間接的な恩恵を受ける可能性があります。

財政面への示唆

関税撤回は重要な意味を持ちますが、必ずしも財政面で決定的なショックとは言えません。

 

・Tax Foundationの推計によれば、2025年の米国の関税収入は1,420億米ドルで、GDPの0.5%弱、連邦税収全体の約3.75%に相当します。


・本日の判決が他の関税措置によって相殺されない場合、実際の減収幅はこのヘッドラインの数字を下回る見込みです。特に、部門別関税など一部のトランプ関税は、今回の判決の直接的対象に含まれない可能性があります。


・年間約1,000億米ドル規模(GDPの約0.3%、税収全体の約2.5%)の関税収入が失われるとの想定は妥当と考えられますが、これ単独で米財務省の資金調達動向や連邦財政全体の状況を大きく左右するものではないでしょう。


法的な示唆と今後の展開

市場の初期反応はポジティブですが、より持続的な影響は、本判決がどのように実行されるか、そして政権がどのように対応するかに依存します。現時点で明確な点もあれば、なお不透明な点も存在します。

 

1)これまでの経緯

・争点となっている関税は2025年2月に開始され、10%のベースラインに加え、より高率の「相互関税」を含む包括的な枠組みへと拡大しました。


・独立系の推計によれば、米国の実効対外関税率は一桁台前半から、2025年後半には10%台半ば~後半へと上昇しました。


・Yale Budget Labは、2025年11月17日時点で、消費者が直面する平均実効関税率は16.8%に達していたと推計しています。


2)救済措置と還付が当面の最大の不確実性

本日の判決は、救済措置の具体的取り扱いを明らかにしていません。これは下級審の判断に委ねられ、上訴が行われれば決着はさらに遅れる可能性があります。

 

・還付は可能ですが、自動的に行われるものではありません。今後の下級審手続きや、上訴の過程次第では最高裁の追加判断を通じて明確化されることになります。


・誰が還付を受けるのかも重要です。還付が実施される場合、原則として税関に支払いを行った輸入者に帰属する可能性が高く、価格転嫁を通じてコストを負担した最終消費者や下流企業が完全に補償されるとは限りません。


3)直接的・間接的な影響

・小売業、消費財企業、輸入投入材に依存する製造業など、輸入依存度の高い分野が最も直接的な影響を受けます。


・経済全体としては、財貿易における摩擦の低減、投入コスト圧力の緩和、投資判断を抑制してきた不確実性プレミアムの縮小を通じて恩恵が広がる可能性があります。


4)関税リスクの終焉ではない

最も重要な政策上のポイントは、本日の判決が法的制約を課したに過ぎず、米国の通商・関税政策を恒久的に撤回したわけではないという点です。

 

・最高裁は、行政が緊急権限を広範な関税手段として用いることを制限しました。


・しかしながら、政権には依然として、法および憲法の枠内で関税を導入する複数の手段が残されています。それらは通常、より正式な手続き、明確な法的根拠、あるいは対象の限定を伴います。


・したがって、無効とされた関税体制をどの程度のスピードで代替するのか、またその規模や範囲がどこまで広がるのかを巡って、不確実性は引き続き残ると考えられます。


結論

本日の判決は、行政府の「緊急」関税手段を制限しましたが、関税リスクそのものを排除するものではありません。最高裁は、法および憲法に整合的な形で関税を再導入する余地を一定程度残しています。それでも、IEEPA関税の撤回は投資家にとって好材料と評価できます。

 

これは一種の財政緩和であり、経済の多くのセクターにおいて購買力と成長を押し上げる可能性があります。また、物価圧力を和らげ、FRBの二重責務を巡るジレンマを軽減する可能性があります。

 

将来的に法的経路を通じて関税の不確実性が再燃する可能性は否定できませんが、本日の判決により、新たな関税措置の規模および広がりは一定程度制約されたと考えられます。

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