高齢者に多い「多疾患併存」に翻弄される看護師たち
高齢者の疾患の特徴として、加齢による生理的機能低下や長年の生活習慣の影響などから、複数の疾患を併せ持つ、いわゆる多疾患併存(マルチモビディティ)が多いということが挙げられます。併存疾患の主なものには、高血圧、糖尿病といった慢性疾患や、骨折・転倒などによる整形外科的疾患、そして認知症があります。
そもそも診療科別病棟(単科病棟)であっても、受け持つ患者によって疾患は違いますし、同じ疾患でも患者によって術式や経過も違うため、看護師は新たな患者を担当するたび、知らない用語に出合い戸惑うものです。そのたびに調べたり上長に聞いたりしながら看護にあたるとなると、患者の状態を理解するだけでも一苦労です。まして多疾患併存の場合は主疾患以外の疾患への配慮も必要とされるため、勉強すべきことはもっと増えますし、看護師の負担は膨れ上がります。
例えば、かつて消化器科病棟では消化器がんで入院する患者が多く、看護師も消化器がんを重点的に勉強すれば対応に困ることはそれほどありませんでした。しかし昨今は、主疾患は胃がんでも、高齢のため呼吸機能や心機能が低下している患者が多く、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病も生じていることがあり、主疾患以外の疾患を併発していない患者は少ない状況です。
高齢者の場合、高血圧や糖尿病が腎臓疾患や心疾患のもとになるなど、複数の病態が影響し合い新たな合併症を引き起こす可能性も高くなります。担当看護師は消化器以外のことも分かっていないと、予防や早期発見が遅れる恐れがあるため、ますます神経をすり減らすことになります。
75歳以上の8割の入院患者が慢性疾患を併発している
東京都健康長寿医療センター研究所の調査では、75歳以上の入院患者で3つ以上の慢性疾患を併発している割合は約6割、2つ以上になると実に約8割との報告もあります。病院はもはや1つの重大な疾患を治療する場所ではなく、こと高齢の入院患者に対しては、複数の疾患を同時に治療するような場所になっているのです。
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