アルミサッシは他の国では使われていない
ではなぜ、こんなに窓性能の基準が違うのでしょうか? 背景の一つに、アルミサッシが普及していることと、樹脂サッシの普及の遅れが挙げられます。
他の国々では、基本的にはアルミサッシは使われていません。なぜなら、アルミと樹脂で比較すると、アルミは樹脂の約1,400倍も熱を通してしまうのです。
つまり、アルミサッシを使っている時点で、十分な住宅の断熱性能の確保は困難なのです。そのため、他の国々ではアルミサッシはほとんど使われず、樹脂製もしくは木製サッシが主流を占めています。
日本も樹脂サッシの割合が少しずつ高まっていますが、図の通り、新築住宅における樹脂サッシの割合はまだ29%程度で、他国に比べて圧倒的に普及が遅れています(図表4)。
なぜ、窓の性能向上が重要なのか?
窓の断熱性能向上には、様々なメリットがあります。
まず、経済的メリットです。高断熱の窓を採用すると、当然建築コストは上がりますが、それによる住宅ローンの返済額増よりも冷暖房光熱費の削減額のほうが大きくなります。そのため、何年で改修できるかということではなく、ランニングコストを考慮すると、初年度から得になります。さらに、住宅ローン完済後は、光熱費の削減メリットはすべて懐に残りますから、老後の生活のゆとりにもつながります。
次に、窓の断熱性能を向上させることで、かなり家のなかの室温差を減らすことができるため、ヒートショックリスクを大幅に軽減できます。ヒートショックは、家のなかの室温差が脳や心臓に負担をかけることをいいます。ヒートショックに起因して、冬に浴室で亡くなる人は、約19,000人/年にも上ります。これは、交通事故死者数のなんと7倍以上です(関連記事:『血圧もコレストロール値も上昇…命を縮める「日本の寒すぎる家」恐ろしい実態』)。
また、冬の寒さや夏の暑さが大幅に軽減され、暮らしがとても快適になります(関連記事:『高気密・高断熱の暮らしは、人生の質(QOL)を激変させる!?』)。
特に冬に、コールドドラフトといわれる暖房された暖気が窓で冷やされて足下に下りてくる現象が起こりにくくなるので、足下の寒さがだいぶ改善されます(図表5)。
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