生活者とつながり、対話によって、インサイトを摑む
小父内 我が家もそうですが、この記事の読者のみなさんもきっと、ご自宅のあちらこちらに花王さんの商品があるのではないでしょうか。私たち生活者の身近なところで長年ブランドを築きあげてきた花王さん。その中でコミュニティの導入を推進していらっしゃるDX戦略部門インタラクティブプラットフォーム統括センターダイレクトコミュニケーション部の岡田さんと的野さんにお話を伺っていきたいと思います。まずは、花王全体のマーケティング戦略を教えてください。
岡田 弊社では、数年前からLife Value Solution Marketing(ライフバリュー・ソリューション・マーケティング、以下LVSM)という言葉を掲げています。弊社はさまざまな商品やブランドを展開していますが、機能的な使いやすさだけでなく、ライフバリュー(生活価値)を提供し、その結果として人々の心豊かな生活の実現を目指しています。生活価値という言葉には気持ちや感情的な価値のほかに、社会にとってどうあるべきかという社会的価値といったものも含まれています。
小父内 御社らしさが詰まった言葉ですね。LVSMという考え方は社内に浸透しているのでしょうか?
岡田 花王は、創業当初から生活者の課題解決に取り組んできた歴史があります。商品開発フローの中でも、その商品の生活価値が何なのかという部分を意識してコミュニケーションをとっています。LVSMの考え方は社内の共通認識になっていますね。生活価値を把握するには、生活者を深く理解している必要があります。だからこそ、生活者と直接つながり、対話をしながらインサイトをつかむことが大切だと感じています。
コミュニティによって生活者を深く知ることができる
小父内 企業と生活者や顧客の関係は、つながり続けることが非常に重要ですよね。まさにコミュニティは打ってつけの選択肢です。コミュニティ開設前に抱えていた課題について、教えてください。
岡田 生活者の価値観やライフスタイルがますます多様化してきていることから、従来よりもインサイトが把握しにくくなっているという課題があり、より深いデータが求められるようになりました。そこで、さまざまなデータとの紐付けができる自社で入手した生活者や顧客のデータ、いわゆるファーストパーティデータの重要性が増してきたのではないかと感じています。
小父内 これからの時代は、「深さ」がひとつのキーワードになりそうですよね。そのなかで、やはりコミュニティだと、生活者との関係性が深くなりやすいというイメージがありますか?
岡田 すごくありますね。弊社では2013年から会員制コミュニティサイトを運営し、生活者や花王ファンとの共創に取り組んできました。生活者と直接つながることで、定量・定性の両面から生活者を深く知ることができ、想定外の価値発掘や仮説創出が得られると実感しています。
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