(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者とくらべて重い税・社会保障負担を強いられている若者世代を救うため、「社会保険料の引き下げ」を求める声も少なくありません。しかし、こうした意見は“財務省の思うツボ”かもしれません。経済アナリストの森永卓郎氏が“決死の覚悟”で執筆した著書『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より、世代間の対立を煽る財務省の「ほんとうの狙い」をみていきましょう。

安部氏の考える案…森永氏「あまり意味がない」

給付水準を下げるか、支給開始年齢を繰り延べるのかは、あまり意味がない。現在の制度でも、年金の支給開始年齢は60歳から75歳の間で自由に選べるからだ。

 

現在は支給開始年齢を1カ月遅らせるごとに年金給付は0.7%増える。この仕組みを前提にすると、年金の支給開始を80歳にすれば、年金は126%増えることになる。

 

逆に言えば、原則80歳支給開始になったときに、年金支給開始年齢を現状と同じ65歳から受給すると、年金給付総額は66%減ることになる。つまり、年金の価値が3分の1になるのだ。

 

そうなれば、当然、年金保険料も3分の1に下がる。今の厚生年金保険の保険料率は18.3%で、そのうち半分が労働者の負担になっているから、9.15%の負担だ。それが年金給付を3分の1に下げることで、3.05%に下がる。

 

年収500万円のサラリーマンであれば、年間30万5,000円の負担減となるので、それなりに大きな効果がある。

 

もちろん、そこにはとてつもなく大きな代償が待ち受けている。

 

「社会保障費カット」は一見すると魅力的だが…国民を襲う“とてつもなく大きな代償”

現在、厚生年金の平均給付額は、夫婦で月額21万円だ。それが原則80歳支給になったときに、65歳から給付を受けようとすると夫婦で7万円に下がるのだ。

 

さらに、今後人口構成が高齢化していくので、安部氏が年金を受け取る時代には4割の削減になる。つまり、夫婦が受け取る公的年金はわずか4万2,000円になってしまう。さすがにそれでは生活することができないだろう。

 

安部氏と話していて、もうひとつ驚いたことがある。彼のところに財務省の主計局長までがやってきているというのだ。

 

なんでも数兆円規模の大きなプロジェクトを安部氏が構想していて、その打ち合わせのために来ているそうなのだが、私はその打ち合わせの場で財務省の入れ知恵があったのではないかと考えている。

 

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※本連載は、森永卓郎氏の著書『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』(フォレスト出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

書いてはいけない 日本経済墜落の真相

書いてはいけない 日本経済墜落の真相

森永 卓郎

フォレスト出版

筆者がテレビやラジオなど、メディアの仕事をするようになって四半世紀以上が経過した。その経験のなかで、メディアでは、けっして触れてはいけない「タブー」が3つ存在した。 (1)ジャニーズの性加害 (2)財務省のカル…

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