増税を「勝ち」、減税を「負け」と呼ぶ財務省
「税収弾性値」という言葉をご存じだろうか。
名目GDPが1%増えたときに税収が何%増えるかという数字だ。税収弾性値は一般的に1を超える。たとえば、給料が増えたとき、給与の増加率を上回って所得税が増える。累進課税の下で、より高い税率が適用されるようになるからだ。
財務省は、中長期の財政計画を立てるときに、この税収弾性値を1.1と設定してきた。しかし、最近この税収弾性値に異変が起きている。たとえば、2022年度は3.0、2021年度は4.1となっているのだ。
つまり、名目GDPを1%伸ばすと、その3倍から4倍のペースで税収が増えていることになる。もちろん税収弾性値は、単年度で見ると不安定だ。たとえば、2020年度の弾性値は▲1.2とマイナスになっている。
そこで、過去5年間平均の弾性値を計算すると、22年度は15.5という恐ろしい数字になっている。そして、2000年以降の数字を眺めていくと、1という数字はなくて、3前後の数字が並んでいる。
このことは、増税ではなく、GDPを増やすことを考えていけば、高齢化に伴う社会保障負担増などの財源を確保できることを意味している。
ところが、財務省は、消費税の引き上げなどの増税策ばかりを示して、経済規模拡大による税収増というビジョンはほとんど出てこない。いったいなぜなのか。
財務省内では、増税を「勝ち」、減税を「負け」と呼んで、増税を実現した官僚は栄転したり、よりよい天下り先をあてがわれる。
さらに消費税率の引き上げに成功した官僚は「レジェンド」として崇め奉られる。一方、経済規模を拡大して税収を増やしても、財務官僚にとってはなんのポイントにもならない。
財務省“改心”のヒントは「阪神タイガース」にあった!?
18年ぶりにセ・リーグ優勝を果たした阪神タイガースは、攻撃面で見ると、チーム打率が突出して高いわけではない。しかし、出塁率はダントツの1位だ。
その理由は、選んだ四球の数が圧倒的に多いからだ。ヒットだろうが四球だろうが、塁に出るのは同じだ。そこで岡田監督は、フロントに掛け合って、選手の成績評価で、四球獲得に与えるポイントを高めてもらったという。これにより四球を選ぶ選手が劇的に増えた。
そのことを考えると、財務省の増税路線を改める方法は簡単だ。
増税を主導した官僚にマイナスポイントを与え、経済拡大に伴う税収増を実現した官僚にプラスポイントを与えるのだ。そのために官邸が財務省から人事権を取り上げ、個別に官僚の人事評価をすればよいのではないだろうか。
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