■築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
「売却」に最適なタイミングは?
では逆に売却に最適なタイミングはあるのでしょうか。いわゆる「出口戦略」と呼ばれるものです。出口(売却)までにどういう道筋をつけておくのかは不動産投資において重要です。売却タイミングにはいくつかの目安があります。
1.売却価格が、購入価格と維持費の合計を上回ったとき
これはいわゆるキャピタルゲインで、分かりやすい状態です。売却価格が上回るためには、土地の価格の上昇などが必要です。
2.満室状態のとき
一棟アパートの売却は基本的に入居者がいることが前提になります。今後の利回りの計算がしやすいため満室であれば価値が高まります。満室であるということは、借主にとって立地、建物、設備、駐車場、家賃などの魅力があるということです。オーナーがその魅力を正確に分析することによって、周辺の物件よりもあえて割高な価格設定で売りに出すことも可能になります。
3.元金返済額が減価償却費を上回ったとき
これはいわゆる「デッドクロス」と呼ばれている状態です。デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回っている状態のことです。
建物の耐用年数は木造であれば22年です。この期間は減価償却費を必要経費として計上できます。減価償却費は実際の支出がないため、帳簿上は利益を圧縮(節税)できるのです。
ところが元利均等返済方式で融資を受けている場合、いずれ元金返済額が減価償却費を上回るタイミングが来ます。そうなると帳簿上は黒字であるもののキャッシュフローはマイナスとなり、現金を失いながらアパート経営をしていくことになります。ゆきつく先は黒字倒産となるわけです。
融資を受けレバレッジをかけて不動産投資をするタイプの人は、デッドクロス状態に陥る前の売却を検討する必要があります。
長岡 理知氏
長岡FP事務所
代表