内憂外患のなか開催された中国「三中全会」…3つの観点から読み解く習政権の経済改革の行方

内憂外患のなか開催された中国「三中全会」…3つの観点から読み解く習政権の経済改革の行方
(写真はイメージです/PIXTA)

2024年7月15日から18日まで、中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(「三中全会」)が開催され、経済政策と改革の方向性が議論された。ニッセイ基礎研究所の三浦祐介氏が、習政権発足後の経済運営の大まかな推移も振り返りつつ、「市場と政府」、「安全と発展」、「成長と分配」の3つの観点から、今後の改革や政権運営の方向性を考察する。

「2029年」の改革達成はなるか:重要なのは形式より実質

以上、本稿では三中全会の結果について、「市場と政府」、「発展と安全」、「成長と分配」の3つの観点から、中国が今後どこに力点を置いて経済政策や改革を進めていくのかを考察した。習政権発足当初に三中全会が開催された2013年時点では、故・李克強首相(当時)をはじめ改革を志向する幹部もいたせいか、「市場、発展、成長」寄りの姿勢が強かったが、その後、様々な情勢変化や習氏への権力集中の過程で「政府、安全、分配」の方向へと修正されていることがうかがえる。

 

これらのバランスをどう取るかは、中国に限らずいずれの国でも腐心する問題だ。ただ、中国の場合、今回のコミュニケで「党が終始中国の特色ある社会主義事業の強固な指導的核心であり続ける必要がある」ことや「イデオロギー上のリスクの防止・解消」の必要性を強調しており、現在の体制による統治の継続にも共産党自身が一定の懸念を抱いていることが示唆される。そうした状況下、旧ソ連の経験も念頭に、遠心力として働く市場化の加速や統制の緩和ではなく、党による統制や内外の安全保障への対策強化と福祉や再分配の強化により、求心力を強めようとしているものと推察される。

 

今後、本稿で挙げたような様々な改革を進めていくにあたっては、どの国でも直面する問題もあれば、中国固有の政治・経済体制だからこそ直面する問題もあるだろう。また、上述の通り既に着手されている改革も多いため、現時点で積み残されている作業は、それだけ骨が折れるものであるともいえる。このように改革の道のりは決して平たんではないが、改革の成否は言うまでもなく今後の中国経済の行方を大きく左右する。近年の不動産不況長期化を経て日本のように成長が停滞する可能性は、デレバレッジの進み方や金融システムの耐性等を踏まえると低いとみているが、改革の成果が芳しくなかった場合には、30年代以降、低成長局面に入り、そのまま停滞してしまう可能性は否定できない。

 

今回の三中全会では、建国80周年にあたる29年を改革達成の期限として新たに設定した。26年に現在の任期を終えた後も習氏が引き続き政権を担い、結果を見届けようとの思いの表れかもしれないが、誰が政権を担うにせよ、29年時点で改革が形式上達成されることは政治的に既定路線と思われる。したがって、今後の経済を展望するに際しては、必要とされている改革が具体的にどのように進捗し、成果として表れていくか等、実際の変化に重きを置いて動向を評価していく必要がある。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2024年7月30日に公開したレポートを転載したものです。

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