(※写真はイメージです/PIXTA)

火災保険に付随して加入することができる地震保険。地震大国である日本において、不動産投資を行ううえでの「地震保険」は非常に重要です。本記事では、健全なアパート経営を守るために活用できる「地震保険」の補償内容、適用範囲や保険料の相場について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。

地震保険に入るオーナーと入らないオーナー

損害保険料率算出機構の統計によると、2022年における地震保険の付帯率(分母は火災保険の契約数)は全国で69.4%です。都道府県別に見ると、東日本大震災に見舞われた宮城県では89.3%と全国値よりもはるかに高くなっています。全国的に見ても2013年から加入率が右肩上がりに上昇しています。

 

しかしアパートオーナーによっては、加入するかどうか悩むケースも多々あるのが現実です。理由は、デメリットも確かに存在するからです。ここでは、アパートオーナーにとって地震保険のメリットとデメリットを説明します。

 

メリット

 

・保険料(掛け金)が全額経費計上できる

 

・投資用不動産は「被災者生活再建制度」の対象外なので自己責任での備えができる

 

・物件に損害があったときにキャッシュフローへの影響を最小限にできる

 

全壊までいかなくても部分的な損害があった場合、地震保険から保険金が支払われるため修繕費に使うことができます。災害後に資金繰りに困るというリスクを多少でも抑えることができます。

 

デメリット

 

・地震保険があっても修繕費に自己負担が発生することがある

 

・保険料(掛け金)によってキャッシュフローが悪化する

 

前述したように地震保険は満額の補償額を契約することができません。さらに時価基準での計算となるため、災害時には地震保険だけで修繕費がまかなえることは稀でしょう。修繕に自己負担も必要になります。

 

またアパートに対する地震保険は高額になるため、キャッシュフローが悪化します。全額経費計上できるとはいえ資金繰りのうえでは不利になるため、受け取れる補償とのバランスで検討すべきです。

 

築古物件の場合は特に、「掛け金は高額・補償は最小限」となってしまいます。地震保険に加入すべきかどうかは、冷静な判断が求められます。

 

保険料(掛け金)の相場

地震保険は政府と損害保険会社の共同運営であるため、保険会社によって掛け金が異なることはありません。具体的な保険料の算出はご自身の保険担当者に依頼するとして、ここでは保険料が決まる「前提条件」について解説します。

 

地震保険の保険料は次の3つの条件で決定されます。

 

・保険料率

 

・契約の長さ

 

・割引制度

 

保険料率は、掛け金を決めるための保険金額1,000万円あたりの保険料のことです。これは都道府県によって異なります。建物の所在地によって掛け金が変わるのはこのためです。

 

保険料率は政府の地震調査研究推進本部による「確率論的地震動予測地図」を活用し、損害保険料率算出機構が算定しています。時代とともに値上げされているのが現状です。

 

契約の長さによっても保険料が異なります。最長5年まで、契約期間が長いほど保険料が安くなります。

 

割引制度は、「建築年割引」、「耐震等級割引」、「免震建築物割引」、「耐震診断割引」の4種類が設けられています。免振建物であれば保険料が半額になるなど、建物構造によって割引のメリットがあります。

 

地震保険における割引制度
[図表2]地震保険における割引制度 出典:財務省

 

ただし耐震性の高い建物は建築費が高額になるため、地震保険のためだけに構造を検討することはないでしょう。

必要に応じた地震保険の加入判断を

地震保険は政府と損害保険会社の共同運営の保険です。掛け金はどこで加入しても同じ条件であれば同じです。

 

一棟アパートの場合、掛け金が高額になることが考えられるため、デメリットも考慮したうえで、加入の必要性を検討してください。

 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表

 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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