(※写真はイメージです/PIXTA)

長年連れ添った夫婦であっても、お互いの心の内を明かせずにいると、「定年退職」は2人の転機となることも。本記事では同じ大企業に勤めていたAさん夫婦の事例とともに、パワーカップルの老後について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

パワーカップルの老後

Aさん夫婦は同じ企業に勤め社内結婚したカップルです。Aさん夫婦の会社では、社内結婚しても部署が同じになることはありませんが、同じ事業所で働くことができます。転勤もありますが、Aさんたちのように社内結婚の場合、夫婦が別居することのないよう配慮してくれることから、長く仕事を続けられる環境です。60歳まで仕事を続けた年金額は以下の図表のとおりです。
 

出所:筆者作成
[図表]Aさんの年金額 出所:筆者作成

 

※老齢基礎年金は2024年度新規裁定者の満額。老齢厚生年金は差額加算を考慮せず。Aさん夫婦の平均標準報酬月額はAさん62万円、456月と妻59万円、480月で計算。

 

2人合わせての年金は470万円超えで、月額にすると約40万円受け取れます。退職金も2人で4,000万円。老後は盤石でゆとりある生活を送れそうですが……。

おしどり夫婦は仮の姿

Aさん夫婦は高校時代の同級生です。大人しい性格のAさんと勝気な妻は、学生のころ友人から「2人が結婚したら、世話焼き女房になりそうだな」「まったく違う性格なのに仲がいいね」と冷やかされることもありました。進学先は、Aさんは4年制大学、妻は短期大学と離れたため、一度は連絡も途絶えました。しかし、偶然同じ会社に就職したため、再会を果たすこととなりました。

 

世話焼き女房的な妻と再会し、気心しれた友人から恋人になり、夫婦となりました。次第に社内では「おしどり夫婦」と呼ばれるように。対外的にはおしどり夫婦でしたが、実際それは仮の姿だったようです。

 

Aさん夫婦は、転勤族だったこともあり持ち家は購入せず、通勤に便利な都内の3LDKの賃貸マンションで生活しています。結婚当初は子どもを望んでいた2人ですが、妻は仕事と両立ができないからと、Dinks(共働き+子どもを持たない)でいることを望むようになりました。Aさんは「納得いかない、協力するから」と必死に何度も説得しましたが、取り付く島もなく、結局自分の気持を表に出すことが苦手なAさんは妻の意向に従うかたちに。このころからAさんはなんとなく違和感を覚えます。

 

さらに結婚生活が始まったころは、交代で家事をこなしていましたが、妻は家事が大の苦手だったのです。3LDKのマンションは、それぞれが1部屋を使っていましたが、妻の部屋は物が溢れ整理整頓されていません。会社での妻からは想像しがたい有り様です。会社での妻はテキパキと仕事をこなすキャリアウーマン。人事評価も高いのです。Aさんは大人しい性格ですが、仕事はそつなくこなし、周りからは仲良しパワーカップルで羨ましい、ともてはやされていました。

 

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