一流の弁護士と税理士の〈完璧な布陣〉で相続対策をしたはずなのに…財産評価額20億円以上!仲睦まじかった地主一家がバラバラになってしまったワケ【相続の専門家が解説】

一流の弁護士と税理士の〈完璧な布陣〉で相続対策をしたはずなのに…財産評価額20億円以上!仲睦まじかった地主一家がバラバラになってしまったワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続問題は家族の関係を大きく左右します。雅男さん(65歳)は父の遺産をめぐる手続きで専門家を頼ったものの、強引な遺産分割が原因で妹との関係が決裂。家族全員が精神的なダメージを受ける結果となりました。相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、相続トラブルを防ぐための専門家の選び方や適切な進め方について解説します。

困っているので助けてもらいたい

雅男さん(65歳)が切羽詰まった表情で相談に来られたのは15年前のことでした。早速、状況をお聞きしましたところ、「父親が亡くなって相続手続きをしているが、どうにも進まず、困っているので助けてもらいたい」といいます。

 

雅男さんの父親は地域の名士で11代目。跡継ぎの雅男さんが12代目となります。父親は土地持ちで自宅は2,000坪の敷地、駐車場やアパートなどが10か所、貸宅地が20か所ほどもあり、財産評価は20億円以上にもなります。


一流メンバーでチームを作った

雅男さんの家は代々の地主さんですから、資産管理会社を運営しています。父親が代表で実務は従業員さんが担当していました。

 

雅男さんは大学卒業後は、公務員として仕事をしていたのですが、父親の希望もあり、退職して、父親の会社を継ぐことになり、40代で代表を承継していました。

 

しかし、不動産の賃貸事業の実務はベテランの従業員さんが担当してくれていたため、ほとんど任せきりにしていたといいます。その頃の雅男さんは商工会など地域の活動が多かったといいます。

 

そのため、相続になるまでは父親の所有する不動産の内容については、あまり把握していなかったというのが実情だったのです。

 

銀行の遺言書の適当さが発端に

相続人は母親と跡継ぎの雅男さんと嫁いだ妹の3人です。父親は都市銀行で公正証書遺言を作成していましたので、亡くなったときから、遺言執行者の都市銀行が担当しました。

 

ところが、この遺言書がことの発端になったといいます。なぜかというと、遺言書には全部の不動産を網羅しないといけないところが、何か所も記載漏れが見つかったのです。

 

一切の不動産を相続する場合もある

「不動産を相続する人が1人の場合は一切の不動産を○○に相続させる」という書き方で、一つ一つの不動産を明記しないこともありますが、雅男さんの父親の場合は、「自宅は配偶者に」「長男には不動産○○を」「長女には不動産○○を」というように3人ともに不動産を渡す内容だったため、不動産の土地、建物、地番、面積、地目、などを登記簿の記載のとおりに記載しておかなくてはなりません。

 

よって事前にチェックし、確認しておけば記載漏れは防げるということです。

 

記載漏れの不動産はどうする?

しかし、雅男さんの父親の遺言書は何か所もの不動産の記載漏れがある形でできあがっているため、相続後に修正することは不可能と言えます。

 

こうしたときにどうするかというと、記載がある不動産は父親の遺志を生かして、遺言書で相続し、名義変更の手続きをするようにします。

 

ところが、遺言書に記載がない不動産については、遺言書とは別に、「遺産分割協議」をし、相続する人を決めて、「遺産分割協議書」を作成しなければなりません。

 

そこで、雅男さんは父親の相続手続きをするプロジェクトメンバーを選任するようにしたのです。

 

相続税の申告は法人の顧問税理士ではなく、新たに相続に長けた弁護士法人に依頼。遺産分割協議は、テレビ出演もする有名な弁護士に依頼して、一流のメンバーを集めました。


弁護士の強引さから妹とは決裂してしまった

ところが、公正証書遺言に不備があり、遺産分割協議をすることになってから、ぎくしゃくし始めました。すでに遺言執行者の銀行は雅男さん家族の信頼をなくしていますので、遺言執行者から外れてもらっていました。

 

よって雅男さんが選任した有名弁護士が遺産分割協議を主導したのですが、雅男さんの意向を優先するあまり、妹の主張は聞き入れようとせず、強引に押し切ろうとしたといいます。妹は遺言や遺産分割の内容が、生前父親から聞いていた内容と違うと再三言ったにもかかわらず、弁護士は聞き入れなかったのです。

 

押しが強く、高圧的に言動もあってか、妹は雅男さんが依頼した弁護士は自分たちの意見を聞いてくれないと不信感を持つように。それだけでなく、雅男さんが財産を多く取得するための策略だと勘ぐり、妹は、仕方なく、別の弁護士を立てて、自分の主張をしてもらうようになりました。

 

結果、弁護士を立てての争いに発展し、当事者では話ができないほど対立してしまったといいます。雅男さんが来られたのは、こうした状況に追い込まれて、心情的に切羽詰まっておられた時期でした。

税理士も失敗している

雅男さんより委託をいただき、父親の遺言書や税理士法人の書類も確認し、課題を整理し、問題解決へのプランを作成して提案しました。

 

土地の評価を確認すると、まだ節税の余地があることが判明しました。自宅の土地2,000坪は評価を下げることができるのに、そうした評価減をしていなかったのです。これだけで、相続税が約1億円節税できるため、相続人全員にとってはメリットになります。

 

次に、土地の評価が下がることから、配偶者の税額軽減が使える財産の半部の枠も余地ができたため、遺産分割協議をし直して、母親の取得割合を大きくするとさらに相続税の納税額を減らせる予想がたてられました。

 

さらには、母親の二次相続対策の候補地である広い自宅の土地を雅男さんが相続しており、節税対策が難しい状況になっていることも指摘しました。

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