15年前、父の遺産分割協議で揉めて以降、実姉二人との間に軋轢が生まれた大槻さん(55歳男性)。母の転居先である老人ホームを姉から教えてもらえなかった大槻さんは、長年母の居場所を探していましたが、ある時、父の墓石に刻まれた母の戒名を発見します。相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、長年にわたり禍根を残す相続トラブルの実例を解説します。
父親の相続でもめた
大槻さん(55歳・男性)の父親が亡くなったのは、15年前。母親と姉二人で遺産分割協議をするのに苦労されました。父親に遺言書がなかったため、自宅と貸店舗、預金などの分け方を決めるのに姉たちがなかなか納得しなかったのです。
法定割合は母親が2分の1、子どもたちが6分の1ですので、それを目安にしつつも、自宅と家賃が入る貸店舗は母親名義として、子どもたちには現金を渡すというのが、母親と大槻さんの案でした。
ところが姉二人は家賃が入る貸店舗の権利が欲しいと言って譲らず、結果、母親6割、姉たちが2割ずつで相続したのです。長男の大槻さんは自宅を相続しました。
老後は息子より娘に頼りたい
遺産分割協議では、姉二人が母親を罵倒するような場面があったようで、修羅場となったと大槻さんは話していました。
自分が亡くなったらもめないようにしたいと、母親は10年前に公正証書遺言を作成し、自分の財産は大槻さんに相続させるという遺言書を作成していました。
しかし、それから年数が経ち、1人暮らしが大変になった母親は、仕事で忙しい大槻さんより、姉二人を頼るようになりました。
母親は遺言書も作り直すと言い出し、貸店舗は子ども三人が等分に相続する内容に変更されました。
父親の相続ではあれだけいがみ合っていたのに、それを忘れたかのようで、母娘が仲良くしてくれるのはよいと大槻さんも母親の面倒は姉任せにしたのです。
母親の居場所がわからない
母親がいよいよ動きにくくなった頃、姉たちが老人ホームを探してきて入所させると言ってきましたが、いつの間にかすでに母をどこかへ連れて行ってしまい、どこに転居したのかも教えてくれませんでした。
姉たちが教えてくれないので、いろいろ探してみましたが、結果、わからずじまい。不本意ながら、そのまま年数が経ってしまいました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載相続のプロが解説!人生100年時代「生前対策」のアドバイス事例