「経営的視点」とは具体的に何を指す?
幹部求人の募集要件で「経営的視点をお持ちの方」という記載を目にしたことがあると思います。エグゼクティブの皆さんの中には、面接結果のフィードバックで「あいにく経営的視点を感じることができませんでした」という不採用理由を受領したことのある人もいるのではないでしょうか。
エグゼクティブの転職で言われる「経営的視点」とは、具体的には何を指しているのでしょう? 今回はこの点について私が日々の現場で直面してきた数々の事例から、代表的な3つの例を紹介します。
「経営側」から見ることができるか。経営の立場に合意できるか
転職相談の際、管理職や経営陣を務めている求職者の方々からかなり頻繁に聞かされる「なぜ転職したいか」の理由に、「経営陣の方針、考えに違和感がある」というものがあります。
某ベンチャー企業のシステム系執行役員を務めるAさん(43歳)は、大手IT(情報技術)企業出身。その後2社を経て、現在の会社が新規株式公開(IPO)する直前にIT基盤強化のためのシステム責任者として入社しました。
上場企業として強固盤石なIT基盤を持つべきだと考え、Aさんは同社の売り上げに比してかなり大きな割合となるシステム投資を起案しました。ところがこれを同社経営陣は「そこまでお金をかけることはできない」と却下。Aさんの提案予算の10分の1ほどでやってくれないかとの話になったそうです。
「うちの経営陣は、社長を含め、皆、営業や経理財務出身者ばかりで、システムに関して素人でまったく理解がないんです」と、転職相談の面談で憤懣(ふんまん)やるかたないという感じで私に語りました。
私は「なるほど。それで、そのIT投資計画ですが、具体的にどのような投資効果をもたらし得るもので、どのくらいで償却できるものなのですか?」とお聞きしたところ、Aさんから返ってきた説明はあやふやなものでした。「上場会社なら、これぐらいのシステムインフラはないとダメですし、IT投資をすべきです」という答え方でした。
Aさんを全面否定するつもりはありませんが、これでは経営陣も投資判断はできないし、それを根に持たれてはたまったものではないなと感じました。私はストレートに、同社の経営陣がAさんの投資提案を聞き、「おそらくこのようにお感じになられたと思いますよ」ということをお伝えしました。
「経営的視点をお持ちの方」のその1は、「経営側から見る」「経営の立場に合意する」ことのできる人か否かです。
AさんのIT投資計画は、無尽蔵な投資資金があるならば素晴らしい計画だったのかもしれません。しかし企業にはそれぞれの事業収支状況があります。実際にどれぐらいの投資余力があるか、またどのような開発ステップと投資であれば可能となるか。そもそもそのIT投資により、事業や経営に具体的にどのような投資効果をもたらすのか、それは経年で見てどのようなものになるのか。こうしたことを、自らの役割としてしっかり織り込んだ企画や提案ができることを「経営的視点を持っている」というのです。
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