部長・課長などの「幹部人材」と取締役・執行役員などの「経営人材」という2つのポジションには、明確な違いがあります。幹部人材に求められるのが「問いに答えて結果を出すこと」である一方で、経営人材に求められるのは「問い自体を設定できること」。こうした違いは転職という場にも大きく影響するといいます。本記事では、エグゼクティブ転職の専門家・井上和幸氏が両者の違いを「転職」という側面から詳しく解説していきます。
「幹部人材」と「経営人材」、転職活動における違いとは?
当連載の第2回(https://gentosha-go.com/articles/-/54167)で、中間管理職=「幹部人材」で止まる人と、役員=「経営人材」に上がる人の違いについて紹介しました。
部長・課長と取締役・執行役員の間にはスムーズに階段をあがるようなわけにはいかない「非連続的ジャンプ」があります。それは、「問い」に答えて結果を出す人から、「問い」自体を設定できる人への転換です。
部長・課長〈中間管理職〉=「幹部人材」に求められるのは「問い」に答えられること。チームを牽引し、実行し、成果を出すことです。一方、取締役・執行役員〈役員〉=「経営人材」に求められるのは「問い」を立てること。我が社、我が事業・組織がどこに向かうべきなのか、何を解決すべきなのかを決めることができる最終責任者であることです。
ではこの「幹部人材」と「経営人材」とで実際の転職活動時に、どのような違いがあるか。今回はこのことについて紹介いたします。
整った場を求める〈幹部人材〉vs宿題のある場を求める〈経営人材〉
そもそも転職をする理由が何なのかによって、皆さんが転職先に求めるものは当然異なってきます。
職務のレベルや幅を広げたい、もっと裁量権を持ちたい、異なる職務にチャレンジしたいなどの職務要件にまつわることから、給与などの雇用条件を改善したい、人間関係の折り合いが悪くリセットしたい、親の介護などの事情により実家近くに勤務地と居住地を移したいなど、付帯条件での希望や事項もあるでしょう。
もちろん転職には不満要素の解消が含まれる場合がほとんどですから、それを解消してくれる「整った場」を求めるのは当然といえます。
しかし、経営人材の方の転職では、これらの要素が含まれていたとしても、本筋としては、次の場に「自分が解決すべき宿題」が存在していることが求められます。あるいはそれを求める姿勢と気概のある方が、経営人材として採用されるのです。
「コーポレートガバナンスが充分に機能していない」「効果的なマーケティング施策が実行できていない」「キャッシュフローマネジメントに問題がある」「従業員エンゲージメントをなんとか向上させたい」
こうした転職先企業の課題に対して、「それはなかなか厳しい会社だな(やめておこう……)」という判断をするのか、「なるほど、その宿題をぜひ自分の経験と専門で解決してやろう」という判断をするのか。ここにまず、「幹部人材」と「経営人材」との大きな境界線が存在します。
逆に「経営人材」にとっては、転職先に自分がダイナミックに着手し片付けるべき宿題のない案件は、選択に値しないものなのです。シンプルにいえば、「課題解決型思考・行動ではない人が、経営人材であることはない」のです。
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株式会社 経営者JP
代表取締役社長・CEO
1966年群馬県生まれ。1989年早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。人材開発部、広報室、学び事業部企画室・インターネット推進室を経て、2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年より株式会社リクルート・エックス(2006年に社名変更、現・リクルートエグゼクティブエージェント)。エグゼクティブコンサルタント、事業企画室長を経て、マネージングディレクターに就任。
2010年2月に株式会社 経営者JPを設立(2010年4月創業)、代表取締役社長・CEOに就任。経営者の人材・組織戦略顧問を務める。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供している。人材コンサルタントとして「経営者力」「リーダーシップ力」「キャリア力」「転職力」を劇的に高める【成功方程式】の追究と伝道をライフワークとする。 実例・実践例から導き出された公式を、論理的に分かりやすく伝えながら、クライアントである企業・個人の個々の状況を的確に捉えた、スピーディなコンサルティング提供力に定評がある。自ら2万名超の経営者・経営幹部と対面してきた実績・実体験を持つ。
著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『知名度ゼロでも「この会社で働きたい」と思われる社長の採用ルール48』(共著、東洋経済新報社)、『あたりまえだけどなかなかできない 係長・主任のルール』(明日香出版社)、『プロフェッショナルリーダーの教科書』(共著、東洋経済新報社)、『人物鑑定法 あの人も、丸見えになる』(経済界)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。取材・コメント・出演実績として、「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日刊工業新聞」「週刊東洋経済」「日経ビジネス」「GQ JAPAN」「週刊現代」「プレジデント」「AERA」「月刊BOSS」「CIRCUS」「日経ビジネスオンライン」「ITmediaエグゼクティブ」「BOSS online」、フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「キカナイトF」、その他業界誌等多数。
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連載相談実績2万名超の経営人材コンサルタント直伝!“エグゼクティブ転職”成功マニュアル