(写真はイメージです/PIXTA)

2024年4月26日、米国で「外国敵対勢力に支配されたアプリより米国人を保護する法律」が成立した。この法律は外国敵対的勢力(foreign adversary)によって運営(支配)されるSNSを禁止する法律であるが、特にTikTokについては条文で明記する形で、外国敵対勢力に運営される限りにおいては、米国内でのサービス提供を禁止する内容となっている。TikTokは270日以内(大統領の認定により90日間延長が可能)に外国敵対勢力とされた現在のByteDanceなどの企業から外国敵対勢力と関係のない第三者へ売却され、ByteDanceなどの企業との提携などもすべて解消する必要がある。また、TikTokが禁止された場合に、ユーザーの利用可能なアカウントデータ(写真や動画を含む)をユーザーに提供することを求めている。本法の成立後、TikTokは法律の違憲性を主張して、米国を相手に訴訟を開始している。ニッセイ基礎研究所の松澤登氏が「米国のTikTok禁止法」について解説する。

2―敵対勢力が管理するアプリケーションの禁止(2条)

1|禁止されるアプリケーション

本法(原文ではdivision、章、節などと訳されるがここでは本法とした)により、外国敵対勢力が管理するアプリケーション(例:TikTok)の配布、保守、更新をすること、またはインターネットホスティングサービスで提供することが禁止される。ただし、この禁止は、大統領が定める適格売却を実施した対象アプリケーションには適用されない。

 

本法において、外国敵対勢力が管理するアプリケーションとは、(1)ByteDance, Ltd.、TikTok、それらの子会社、後継者、それらが管理する関連事業体、または外国敵対勢力が管理する事業体、または(2)敵対国が管理し、国家安全保障に重大な脅威をもたらすと大統領が判断したソーシャルメディア企業が直接または間接的に運営するアプリケーションを指す(ここでいうソーシャルメディア企業には、主に製品レビュー、ビジネスレビュー、旅行情報やレビューの投稿に使用されるウェブサイトやアプリケーションを含まない)。

 

本法において、敵対国には北朝鮮、中国、ロシア、イランを含む。

2|適格売却とデータ移管

適格売却とは、大統領が(省庁間のプロセスを通じて)決定した、以下のいずれをも満たす取引のことである。

 

・適格売却の結果、当該外国敵対者が管理するアプリケーションが外国敵対勢力によって管理されなくなること、かつ

・当該アプリケーションの米国での運用と、外国敵対勢力によって支配されている、適格売却以前の関連事業体との間の運用関係の確立または維持(コンテンツ推奨アルゴリズムの運用またはデータ共有契約に関する協力を含む)を排除すること。

 

この禁止は、本法の施行日から270日後に適用される。本法は、大統領が議会に対し、以下の3点を証明した場合、対象アプリケーションに対し、90日を上限とする1回限りの延長を認める権限を与える。

 

(1) 対象アプリケーションの適格売却を実行する道筋が特定されていること、かつ、

(2) 対象アプリケーションの適格売却の実行に向けた重要な進展の証拠が示されていること、かつ、

(3) 延長期間中に適格売却の実行を可能にする関連する適切な法的合意が整っていること

 

さらに本法では、対象外国敵対勢力の管理するアプリケーションに対し、禁止の効力を発生する前に、ユーザーの要求に応じて、利用可能なすべてのアカウントデータ(投稿、写真、動画を含む)をユーザーに提供することを求めている。アカウントデータは機械可読形式(machine-readable format)で提供されなければならない。

3|執行権限

本法は、司法省に違反の調査とその本法の規定の執行について権限を付与する。本法に違反した事業者は、違反に対して民事罰の対象となる。対象アプリケーションの配布、維持、更新、またはインターネットホスティングサービスにおいての提供の禁止に違反した事業体には、違反の結果としてアプリケーションにアクセス、維持、または更新した米国ユーザーの数に最高額5,000ドルを乗じた罰金が課される。

 

また、要求に応じてアカウントデータをユーザーに提供するという要件に違反した事業体には、最高500ドルに、違反によって影響を受けた米国ユーザーの数を乗じた額の罰金が課される。

 

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次ページ3―裁判管轄権(3条)

※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2024年6月17日に公開したレポートを転載したものです。

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