(2)不成立でも示談交渉をした事実によって、罪が軽くなることはあるのか。
結論から申し上げると、示談交渉をしたという事実自体は、罪が軽くなる考慮事情となりえますが、示談交渉をしたという事実があるだけでは、量刑上大きな影響を与えることは少ないと思います。
示談交渉は、被害者への被害弁償や加害者の謝罪反省の現れとして行われるものではありますが、刑事手続との関係においては、加害者の一般情状面で考慮される事項(言い換えれば、量刑を軽くするための事情)となりえます。
ただし、いわゆる性犯罪系の事案においては、示談が成立したとしても、起訴される可能性がありますし、どのような示談交渉の内容であったのかにより、考慮される比重は変わると考えられます。
また、訴訟交渉上の戦術として、刑事裁判の判決が出るまで示談や賠償請求はせず、刑事裁判が終わった後に、あらためて損害賠償請求等をすることで、刑事裁判には示談の事実を考慮させないといった方法もあり得ます。
ただし、示談交渉をしたとしても、またはしなかったとしても、加害者側からすれば、刑事裁判になるかどうか、また仮に刑事裁判になった後は有罪となるかどうかに強い関心があります。だからこそこれらのタイミング前に示談をしたがるのであって、タイミングを外すと示談をしてこない、被害弁償をしないというリスクが生じます。
「一番大切なことは、お嬢様のお気持ちや将来」だと思いますので、何が本当にいい選択かは、十分慎重に考えられた方が良いかと思います。
(3)今後の流れはどのようになるのか。また、被害者側でも弁護士に依頼した方が良いのか。
今後の流れとして、警察での捜査(当事者の取調べや客観的な証拠集め)を経て、最終的には検察官が、刑事裁判とするかを決めていくことになります。刑事裁判となった場合、有罪か無罪の判決となります。有罪の場合は、刑務所に行くか、執行猶予がついて社会生活に戻るかという判断になります。
その一方で、刑事裁判をできるだけの証拠が集まらなかった場合には、刑事裁判とならず、刑事事件としては終了ということになります。この場合には、別途、民事事件として損害賠償請求をしていくかどうかを考えることになります。
次に、被害者側が弁護士に依頼した方が良いかどうかですが、結論としては、被害者側も弁護士にご依頼した方が良いと思います。
その理由ですが、当事者やご家族が、今回の事案の見通し、加害者側の示談の条件の検討、被害者側から提示する条件の検討、お嬢様の心情面への配慮等に関して、法的に整理をして、冷静に判断することは、相当なご負担となります。さらに、当事者や親御様が相手方と対峙していくことは、精神的にも肉体的にもかなり疲弊すると思われます。
また、刑事手続の流れや民事の賠償等も含めて、今後の見通しや適宜の適切な対応等の見通しをつけることは、弁護士でなければ対応が困難なものです。
このように犯罪被害は、多角的に検討する事項があり、法的な整理だけでなく精神的な負担や労力、時間等の負担を減らし、メンタルケアも含め、適切な交渉等を交えて加害者側に対応していくためには、被害者側にも弁護士に入ってもらったほうが良いと考えられます。
なお、性犯罪等の一定の犯罪被害の場合、被害者の方の資力状況によっては、犯罪被害者援助制度を用いることで、弁護士に依頼する際の着手金の負担を軽減等することができます。
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