親子間売買をする場合
不動産を親から子へ生前に引き継ぐには、贈与以外に親子間売買をする方法もあります。ただし贈与では発生しない費用負担があるため注意が必要です。
売買により親子どちらも税金を支払う
贈与で不動産を譲るとき、贈与する側の親には費用が発生しません。一方、子には贈与税や不動産取得税がかかることがあります。
しかし、親子間売買では子だけでなく親にも税金が課されます。なぜなら不動産の売却により利益が発生すると、譲渡所得税の課税対象になるためです。譲渡所得税の税率は、譲り渡した年の1月1日時点での所有期間が5年超であれば15%、5年以下の場合は30%です。加えて復興特別所得税(所得税額の2.1%)や住民税(所有期間5年超5%、5年以下9%)もかかります。適正な価格で売買を行った場合は子に贈与税は課せられませんが、不動産取得税はかかります。
みなし贈与には贈与税がかかる
親子間売買において、不動産を相場とかけ離れた低価格で売買すれば税金を節約できると考える人もいるでしょう。ただしこの方法は『みなし贈与』と判断されるため要注意です。
たとえば、2,000万円程度の価値がある不動産を100万円で売買するようなケースでは、1,900万円のみなし贈与が行われたとされます。当然、みなし贈与分は贈与税の課税対象です。
判断基準は法的に定められているわけではありません。目安として地価公示価格の8割以下での売買だと、みなし贈与と判断される可能性があります。不動産の親子間売買を検討する際は、注意点などを税理士に相談するのが賢明です。
親から住宅取得資金の贈与がある場合
不動産ではなく、住宅を取得するための資金を贈与するケースもあります。住宅取得資金を贈与する場合には、一定額まで贈与税が非課税になる制度があります。住宅取得資金の贈与の非課税とはどのような制度なのでしょうか?
一定額まで贈与税が非課税になる
住宅取得資金の贈与を父母や祖父母などの直系尊属から受けた場合、令和8年(2026年)12月31日までであれば、非課税の特例を利用できます。所定の条件を満たすことで、最大1,000万円までの資金贈与に贈与税が課税されません。
一般の住宅よりも、省エネ性能などを満たした高機能住宅の方が、非課税限度額が大きいのが特徴です(一般の住宅500万円、省エネ等住宅1,000万円)。
細かな要件を満たさなければならない
贈与税の負担を抑えたいとき、非課税の特例は非常に役立ちますが、所定の要件を満たさなければ利用できません。まず資金を贈与されたら、その翌年の3月15日までに住宅の購入や新築をして遅滞なく居住することが要件となります。また住居は床面積40~240m2が対象です。
他にも、受贈者である人の年齢が贈与を受ける年の1月1日時点で18歳以上であることや、所得金額が2,000万円以下(取得する住居の床面積が40m2以上50m2未満のときは1,000万円以下)であるなど、さまざまな要件を満たさなければなりません。
加えて中古住宅を取得するときには、建築時期の要件や耐震基準を満たしている必要もあります。
購入済住宅のローン返済に使うお金は対象外
非課税の特例が適用されるのは、住宅の取得や増改築に使用する資金のみという点にも注意しましょう。同じ金額を贈与されたとしても、資金を住宅ローンの返済に充てるのであれば、特例の対象になりません。
また、タイミングを考えて贈与を受けないと、特例の適用外になることもあります。贈与を受けた翌年の3月15日までに、あるいは同日以降遅滞なく居住しなければいけないため、それまでに居住できるか事前に確認します。
後から期日に間に合わなくなる事態を避けるよう、贈与は居住開始の直前に受けるのがポイントです。
贈与制度の仕組みを理解して賢く活用を
不動産の贈与を受けた際にも贈与税は課税されます。暦年課税では、年間110万円までの基礎控除の範囲内で財産が贈与されたのであれば、贈与税はかからず申告も必要ありません。
相続時精算課税を選ぶと、累計2,500万円の特別控除があるほか、令和6年(2024年)以降は年間110万円の基礎控除もあります。ただし、相続時精算課税制度で贈与された財産は、基礎控除を行った分を除いて相続時に相続財産に加えられ、相続税の課税対象になる点には注意が必要です。
相続税の負担を抑えるためには、不動産ではなく、住宅購入資金として贈与するのも一つの方法です。さまざまな要件を満たす必要はありますが、最大で1,000万円まで非課税にできます。