死の淵から生還…急ぎ、相続対策を進めることに
横井智也(仮名/60代)は昨年から本格的に相続対策に着手した。
きっかけは大病を患い生死の境をさまよったことにあった。いまではリハビリも進み、従前の状況に近づきつつあるが、将来のことを考えると生前に準備を行っておくことが望ましいと考えている。
身体をもとの状態に戻すとともに、この世に生を享けた限り寿命をまっとうしたいと思い、リハビリや筋力の回復にも全力で取り組んでいる。
承継にあたっては、2人の子供(長女・長男)のうち長女に不動産を承継してもらいたいと考えている。長女は、人との接し方も抜群に優れているとともに、不動産や金融、税務の知識にも長けており後継者として最も相応しいためだ。
早速、所有資産の整理および相続税額の試算から着手した。その後、さまざまな検討を行い納税資金の確保とともに、所有する月極駐車場への賃貸マンション建築、不動産の購入を対策の柱とした。
取引のある金融機関への融資の打診なども並行して行い、計画の骨子が徐々に固まってきた。ここに至るまで長女にはすべて同席をしてもらい主体的に取り組んでもらった。
しかし、順調に進んでいくことに比例して私の心には大きな不満が膨らんできている。
不満の正体
不満の正体は明確である。私の「死」を前提にして話をしているためだ。一例をあげればこのようなこともあった。古くから融資や預金の取引がある地方銀行の担当と面談したときのことだ。
相続税の申告書に私の所有資産や負債を記載のうえ「いま、智也さまに相続が発生したら〇〇円です。計画している内容を実現できたとすると〇〇円まで下がります」との提案であった。しかも、娘に対してのみ説明をしており、横に座っている私のことはあたかも存在しないかのような対応であった。
また、別の機会においても「駐車場に、賃貸マンションを建築すると相続税は〇〇円になります。費用はお示ししたとおりですがローンを調達するため、自己資金はさほど要りません。智也さまの相続が発生しても安心して家賃収入からの返済が可能です」この内容についても、娘に対して話をするばかりで私のことを気に掛けるそぶりもない。
私のほうから、長生きすればローンが減っていくことを指摘すると、「当然、その場合には相続税は上がっていきます」との回答である。
対策を進めていくと必ず同じような場面に出くわすことになり、あたかも対策が終われば早く死んでください、と言われているかのようだ。
>>12/11開催セミナー
『家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンについて
元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討』