3.「子か孫に継承」が通用しなくなる?
地主業の後継者についても人口動態同様に今後課題が増えてくる可能性が高い。
図表5は2023年時点における人口ピラミッドであるが、現当主の地主世代を80代前後として考えると、次の代は50代前後、その次の代は20代前後となる。次の代については第二次ベビーブームもあり多くの人口を擁するため承継できないという懸念は少ないが、その先については大きく人口が減少していることから、課題がある。
よく地主業について「三代でなくなる」とのたとえがでる。この言葉の意味としてはいままでは相続税納税による資産の減少を指していたが、今後は後継者不足により承継が途絶えてしまうリスクも含むように思われる。
したがって、今後の地主業の承継にあたっては子や孫の「直系卑属」のみならず甥や姪などの「傍系卑属」への承継が必要となる可能性が高い。
地主業においては、税金や不動産、金融の知識が総合的に必要となることから「直系尊属」に拘り過ぎると一族の衰退に繋がりかねない。したがって、これからは広く親族内で適正な後継者を選定するような取り組みが必要となるのではないか。
4.時代に即した事業経営を
新型コロナウイルスによる「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が記憶に新しい。移動制限により在宅勤務が普及した一方で飲食業や、観光業、貸オフィス業などへの経済的打撃により不動産事業にも大きく影響をおよぼした。
当該事態を予測していた人はほとんどいないと思われ、予測不可能な外的要因により「ホテル」「テナントビル」「オフィスビル」については特に大きな打撃を受けたといえる。一方で「レジデンシャル(住居)」や「物流倉庫」などは大きな影響も受けず比較的堅調であったと思われる。
この事態については正直「運」の良し悪しであったかもしれない。
この経験から地主業においても、所有する不動産の用途によって影響を受けることが明らかになり、用途毎で抱えているリスクが異なることから、これからは事前にリスクを明確にしておくことが望ましいと考えられる。
また、今後の不動産事業においては「SDGs」に即した対応も必要であると思われる。持続可能な建物であることが、資産価値の防衛という観点でも不可欠だ。
クリーンエネルギーや省エネ、永く使い続けられるような仕組みが必要であり、従来のスクラップ&ビルドではなく、手を加えながら長期間にわたって利用していくような取り組みが必要であり、時代に即した変化が求められる。
建物自体のハード面のみならずSDGsには「平等」を謳った内容もあり、たとえば入居者に対する対応についても変化が必要であり、17項目を意識した地主業が今後ますます重要になると思われる。
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