(※写真はイメージです/PIXTA)

ある資産家男性に下された余命宣告。再婚した妻は泣き崩れますが、一方で男性は、妻の行動に不信感を覚えます。その後、男性が決意したこととは…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。

「両親から相続した財産はすべて妹に相続させる」

筆者と提携先の税理士は田中さんの心情を伺い、遺言書の作成をお勧めしました。

 

なにも対策を立てないと、相続の割合は配偶者が4分の3、妹が4分の1となり、田中さんが懸念する通り、財産の大部分が配偶者のものとなります。

 

田中さんが作成した遺言書は「タワーマンション2部屋と有価証券は妹に相続させる。それ以外の財産は妻に相続させる」とし、付言事項としてこれまでの感謝とともに「親からもらった財産は血縁者へ渡したいとの思いを理解してほしい」と書き添えました。

 

「私がこれまで働いたお金で、妻には納得してもらおうと思います。両親からもらった資産は、数十年会っていない妹ではありますが、血縁の親族に継いでもらいたい。それでも、心に穴が空いたような気持ちは消えませんが…」

 

田中さん亡きあと、妻が田中さんの妹に遺留分侵害額の請求をするかどうかはわかりません。しかし、田中さんは「少し心が落ち着いたような気がします」といって、安堵の表情を浮かべました。

遺産配分の口約束は危険

子どもがいない夫婦の相続はトラブルとなることが少なくありません。遺言書を残さなければ、相続人は配偶者と被相続人の親族(親が存命なら親、親が亡くなっていたら、きょうだい・甥姪)ですが、最も相続分が大きいのは配偶者です。

 

被相続人の配偶者に相続された財産は、いずれ配偶者の親族へと相続されていき、被相続人の家系には戻りません。

 

また、遺産配分の口約束もトラブルのもとです。もし田中さんが口頭で妻と妹に希望と伝え、全員が了承したとしても、配偶者の相続分は法定割合で決まっています。もし妻が口約束を反故にしたところで、だれも文句はいえないのです。

 

相続には十分な対策が必要です。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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