「いまのところ借りる案件はないので・・・」
ある経営者がこう言いました。「このあいだ、銀行に初めて言えた言葉があるんですよ」とおっしゃるのです。「どんな言葉ですか?」とお聞きしました。
こういう言葉だそうです。
「いやぁ、いまのところ借りる案件はないので、どうかお引き取りください」
普段から使っている方にはどうってことのない言葉なのですが、「銀行にそんなこと、言ったことがないです!」という経営者も結構おられるのです。
で、銀行から借りてください、と言われると、簡単に借りてしまうのです。心のどこかで、「銀行の言うことをきいておかないと、貸してくれないかもしれない」という不安を抱えておられる場合が多いですね。
あるいは、経理担当者が銀行出身者で、古巣にいい顔をしたいから、「借りておいたほうがいいですよ」などと言われ、借りてしまうのです。冒頭の経営者も、このパターンでした。
財務の知識があれば、「断る」判断ができるようになる
いずれの場合も、財務に明るくないから、銀行のことがよくわからないから、判断ができず、申し出を受けてしまうのです。そこで冒頭の経営者は、財務のことを勉強し、判断できるようになってきたのです。
そうすると、銀行は、言うことを聞いてくれる企業に貸すのではなく、返済能力があるとみている企業に貸したい、ということも理解されたのです。そして、これまで言えなかったセリフをようやく言えたのです。
「言ってみてどうでした?」とお聞きすると、「いやぁ、なんか気持ちいいですねぇ。スッキリしました」とのことでした。
さらに、「それ以来、今まで以上にウチに来るようになったんですよ」とのことで、「これまでさんざん協力してきたんだから、しばらくはスッキリする言葉を使い続けます」と、気持ちよさそうに語っておられました。
財務に明るくなり、融資の要・不要の判断ができるだけで、経営者にとっては、とても大きな自信となるのですね。