銀行が「親身になって考えてくれる」と思いきや・・・
銀行の態度がガラリと変わる、ということを、いくつか経験したことがあります。“銀行サマサマ病”にならないでください、と以前にも書きましたが、銀行には戦う姿勢を見せるべし、なのです。
ある企業で、土地を別会社に売却する、というプランがありました。大きな含み損を抱えており、要は、井上式オフバランス(※)を行うのです。で、別会社では購入資金を銀行から借りることになり、経営者とともに、私も同行して、長年取引のある地方銀行を訪問しました。
土地売却の話を持ち出すと、
「いやぁ、私たちも含み損が気になっていたんですよ。当行でもそのようなときの為のプランがあるんですよ」
というので、
「そうなんですか、そのプランもまた教えてください」
と言った上で、井上式オフバランスを説明しました。
その後、1ケ月を経過しても、銀行のプランは何も出てきません。おそらく、自分たちが得をするようなプランしかなかったのでしょう。それどころか、
「あのようなことをして、否認されたらどうするんですか?」
「法律的に大丈夫なんですか?」
などと、経営者に連絡をいれてくるわけです。
その経営者が「法律的に何が問題なのですか?」と尋ねると、「調べます」と言ったきり、何の返答もないのです。
ちなみに、土地売却にあたり、不動産鑑定を行ったのですが、ちょうどその数年前に、近隣で同規模の土地売却事例があり、その評価に応じて、評価額を算定してもらったのです。しかもその売買は、行政機関同士のものだったので、事例としても文句のつけようがありません。
で、その際のいきさつを知る人物から聞いたところ、「その売買に融資したのはその銀行ですよ!」と言うではありませんか。
そうです、「法律的に大丈夫なんですか?」と言いながら、行政の売買には、すんなり融資していたのです。結局、自分たちの都合のいいプランに引き入れるための、ささやき戦術、だったわけです。
※井上式オフバランスについては、書籍『経営者の財務力を一気にアップさせる本〔補訂版〕』で解説しています。
銀行と戦う姿勢を見せれば「強い交渉」ができる
そのようなことがあり、その銀行から融資を受けることは取りやめ、それだけで終わらさず、別の銀行から借り換えて、すでにあった長期借入残高を、全て精算することにしました。すると、態度がガラリと変わったのです。
銀行の多くは、中小企業に対して、自分たちの方が強い立場だと勘違いしています。中小企業も、なぜか銀行に頭が上がらない、ということがまだまだ多いです。
そうではなく、財務の知識を蓄えて、戦う姿勢を示してほしいのです。そのとき、銀行の態度は大きく変わり、ようやく、強い交渉ができるようになるのです。