(※画像はイメージです/PIXTA)

親から楽して不動産を受け継ぎ、大して働かなくても悠々自適な生活ができるーーそんなイメージを持たれがちな地主。しかし多くの地主には、自身の人生の終盤において、最大の壁が立ちはだかります。それが、相続対策です。本記事では、並木家(仮名)の事例とともに、多くのケースで活用される「王道な相続対策」の注意点について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

相続対策の王道

相続対策の「王道」といえば「不動産」であろう。相続税の計算において不動産は時価(市場における売買相場)ではなく、相続税路線価や固定資産税評価額によって計算がなされるためだ。一方で、借入(負債)については残債額を控除するため資産の圧縮が図れるとして多くの相続対策において採用されるのではなかろうか。

 

悠々自適に暮らしていた地主の並木紀彦(仮名/70代)は、自身もそろそろ頃合いであろうと、後継者への承継を考え、顧問税理士や取引のある金融機関に相談を始めた。

 

まずは、相続税の試算から着手したが3億円程度かかることが判明し、現状のままでは次世代である長男が納税に苦労することが判明した。セミナーへの参加や書籍を購入するなどして検討を行った結果、不動産を購入して対策することが並木家の対策として相応しいのではないかと考えるようになる。

 

賃貸マンションなどは複数所有しているが、先代から承継したものばかりであり、実質的に自らが主体となって取り組むのは初めてである。地元の不動産会社に収益不動産の情報提供を依頼したり、インターネットで探したりと時間を見つけては販売用のチラシを見るようになった。

ネットで見つけた人気物件

インターネットの情報で利回り「10%」を謳う物件を見つけ、興味をもったことから不動産会社に問い合わせを行った。地元からは距離があるが、10%もリターンがあるのであれば、借入を行っても十分に返済可能ではないかと考えた。

 

問い合わせをした翌日には不動産会社からメールで詳細な資料が送られてきた。そして、当該不動産会社の担当から電話が。

 

「とても反響のある物件です。並木様以外にも購入検討をされている方が複数いらっしゃる状態ですので、物件をおさえるのであればすぐにでも買付証明書を出していただかなければ逃してしまいます」と告げられた。

 

送付されてきた物件資料を検討すると、確かに満室想定ではあるものの利回りは10%。築年数は30年近く経過しており古いものの、収益性の高い良質な物件ではないかと思った。

 

早速、取引のある金融機関に相談したところ、共同担保が可能なのであれば購入価格の満額融資可能ではないかと思われる、との返答があった。その場で、正式に稟議を進めて欲しいと依頼して当該物件を購入することに決めた。

 

 

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