(※画像はイメージです/PIXTA)

親から楽して不動産を受け継ぎ、大して働かなくても悠々自適な生活ができるーーそんなイメージを持たれがちな地主。しかし多くの地主には、自身の人生の終盤において、最大の壁が立ちはだかります。それが、相続対策です。本記事では、並木家(仮名)の事例とともに、多くのケースで活用される「王道な相続対策」の注意点について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

想定外の支出にじわじわと首を絞められる

並木氏が物件を購入してから1年経過したころから、建物にかかる不具合が多く発生した。

 

最初に発生したのは、雨漏りであった。修繕業者を手配して原因を確認したところ、屋上の防水が劣化しており、防水機能を果たせていないことがわかった。また、外壁においても塗料の機能低下や、外壁亀裂箇所から雨水が侵入している可能性がわかり、屋上のみならず外壁全体についても修繕する必要性が指摘された。さらには、シーリングについても、すでにかなりのひび割れが発生しており、シーリングとしての機能を果たしていないことが判明した。

 

これにより、足場を組んだうえでの大規模修繕を実施する必要性が生じた。いくつかの施工業者から見積もりを取得したが、どこもおおむね3,000万円ほどであり、工事の先延ばしを行うとことで、より建物へのダメージが大きくなることから納税資金として確保していた手元資金から拠出することに。

 

さらなる深刻な問題としては、空室が発生していることがあげられる。なかなか入居者がつかない状況が続いているのであった。購入した不動産の最寄り駅近くにある不動産業者に出向き確認をしたが、理由としては畳部屋があることや間取りや水回りなどの内装が古いことが選ばれない理由になっているとのことであった。不動産業者によると、いままで何度か案内をしたことはあったが、内見者はみな当該理由で入居まで至らなかったそうだ。

 

なお、スケルトン(内装などをすべて解体)にしてリノベーションする場合は、安く見積もっても1戸あたり200万円~300万円かかるとのことである。手始めに空室の続く1戸について300万円かけてリノベーションを行った。工事後には不動産業者の話のとおり、入居者が割とすぐに決まったが、従来の家賃にプラス5,000円できたのみであり、増額分による回収までは50年(300万円÷6万円=50)。費用対効果は極めて悪いと感じた。

 

購入した不動産は全部で25戸あり、仮にすべての住戸をリノベーションしたとすると7,500万円(300万円×25戸=7,500万円)である。

 

今後、給水ポンプやエレベーター、給排水管や消防設備などの設備更新も計画的に行っていくと考えると相応の修繕積立が必要であろう。

 

相続対策のためと焦って購入を進めてしまったが、いまとなってはなんのために買ったのか、よくわからないと後悔する日々を送っている。

 

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