(※画像はイメージです/PIXTA)

親から楽して不動産を受け継ぎ、大して働かなくても悠々自適な生活ができるーーそんなイメージを持たれがちな地主。しかし多くの地主には、自身の人生の終盤において、最大の壁が立ちはだかります。それが、相続対策です。本記事では、並木家(仮名)の事例とともに、多くのケースで活用される「王道な相続対策」の注意点について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

利回りは本当に10%だったのか?

並木家に発生した一連の事象を整理すると以下のとおりである。

 

出所:筆者作成
[図表2]並木紀彦が購入した物件 出所:筆者作成

 

諸経費は考慮外であるが3億円で購入した物件も、その後1億円以上かけていることから実質4億円程度ではなかろうか。リノベーションによって賃料は若干上がったが、当該賃料をもとに計算すると7.8%である。そもそも、7.8%であると知っていたら並木氏は購入していないかもしいれない。

 

また、自己資金を1億円程度投入しており当初の計画からも大きく異なっている。結果から考えれば4億円の物件を自己資金1億円入れて購入したと考えることもできる。

 

なお、不動産鑑定評価における収益価格の算定にあたっては総賃料から空室損や滞納リスクを控除、不動産運営にかかる経費を控除、さらに大規模修繕にかかる積立分を控除した残額(NCF:ネットキャッシュフロー)に対して、還元利回りで割り戻して行う。不動産が長期間に亘って適正に維持管理されることを前提とするためである。

 

特に、築年数の経った物件はそこに至るまでの修繕を含む維持管理の状況によって建物の程度が大きく異なってしまう。適切なメンテナンスが不動産を長く利用するうえで不可欠である。

 

したがって、中古の不動産に関しては特にそれまでの修繕の実施状況を確認することが重要であり、また将来的に適正な価格で売却するためにも購入後においても修繕履歴はしっかりと残しておくことが望ましい。

まとめ:相続対策のための不動産購入時に注意すべきこと

・不動産は特有のリスクが含まれること
・利回りのみを判断基準とせず焦らずによく収支の分析を行うこと
・利回りのみならず、不動産の運営管理費(維持管理費、管理手数料、損害保険料、水道光熱費、原状回復などの修繕費、固都税、テナント募集費用など)や修繕積立費用、ローンの元利金など支出についてもシミュレーションを行っておくこと
・収入面においても空室の理由や募集期間、賃料の妥当性、一括貸しなどの場合は突然の空室リスクもあることから、収入が安定的に得られるものかの検証を行っておくこと
・中古物件の購入にあたっては修繕履歴などもしっかりと確認しておくこと
・相続税の圧縮のみならず不動産自体についても適切な分析が必要であること
・不動産は大きな買い物であることから取り返しのつかないことにならぬよう専門家の意見も仰ぐこと

 

不動産購入にあたっては、以上のポイントに注意したい。

 

 

小俣 年穂

ティー・コンサル株式会社

代表取締役

 

<保有資格>

不動産鑑定士

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

宅地建物取引士

 

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