1990年代中盤から2000年代初頭に生まれた世代のことを指す「Z世代」。今年度はそのZ世代のなかでも四年制大学の場合、新型コロナの始まりとともに大学に入学した年次である「新型コロナ一期生」が入職する年です。世代間でデジタルに対する姿勢やコミュニケーションにおいてギャップを感じる場面がしばしばあるでしょう。本記事では医療機関やヘルスケア業界で活躍する人材の育成に携わる立場から、東京医療保健大学医療保健学部教授の瀬戸僚馬氏が、GW明けに5月病退職を増やさないための「Z世代と同じ職場で働くためのポイント」について解説します。
高い自己肯定感、低い自己効力感
Z世代の特徴を端的に表す言葉として、「自己肯定感が高く、自己効力感が低い」というものがあります。
これはあくまで一般論ですが、自己肯定感が高ければ、「自分のありのままを尊重しよう」という気持ちが強く、ブレない自己を持つことにつながりますが、自分自身のことを見つめ直して内省するのが苦手な面もあります。自己肯定感が高いがために、「環境がよくない」「ルールがよくない」といった外在的な理由探しに終始しがちになるのです。
もう1つの自己効力感は、たとえば仕事上での「やれる」「できる」といった感覚です。職場のなかで困難なことに向き合う場面は誰しもが経験することですが、そのときに「なんとか自分もできるようになろう」という気持ちに向かうのではなく、「こんな大変な仕事で削られたくない」「仕事はそこそこにして、プライベートを充実させたい」といった方向性に行く傾向にあります。つまり、自己効力感が低い状態からなかなか抜け出せないままということが多いのです。
よく新卒者のあいだで使われる言い回しのなかに「配属ガチャ」や「上司ガチャ」というものがあります。ソーシャルゲームの概念である「ガチャ」、もしくはカプセルに入った「ガチャガチャ」のように、新卒者の配属先や自分の上司などが運の要素で決まるといった意味合いですが、実は自己効力感の低いZ世代の心情をうまく表したものなのかもしれません。
学生「なにをしたらいいのかわからない」
実際に20歳前後の学生と接していて、「自分はなにをしたらいいのかわからない」といった悩みを聞くことは多いですし、それは今も昔もあまり変わりません。
東京医療保健大学の場合、医療保健学部は医療機関で活躍する人材を送り出すことを前提としていますが、筆者の本務とします医療情報学科の場合は病院のシステム部門だけでなく、ヘルステック分野などのIT企業に入ってプログラマーをしたり、あるいは技術営業をしたりする道も開かれています。
看護師などの国家資格の取得とその職種での就業を前提とする学科と比べると、レールが敷かれていないなかで自身のキャリア形成と向き合う要素が大きいといえます。
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東京医療保健大学教授
医療情報システムや情報デバイスの活用を通じた病院業務の可視化とワークフロー再構築、とくに職種間及び施設間の役割分担の見直しが関心領域。
2023年5月には医療機関向けサービス比較サイト「コトセラ」( https://www.cotocellar.com/ )のウェビナーに登壇して好評を博した。
【経歴】
津久井赤十字病院での臨床、杏林大学医学部付属病院での情報システム担当を経て、2009年より東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科助教。2011年、講師。2016年、准教授。2020年、教授に就任。
第13回日本医療情報学会看護学術大会大会長(2012年8月)、日本医療マネジメント学会第18回東京支部学術集会長(2018年2月)、第17回日本医療秘書学会学術大会長(2020年2月)。日本クリニカルパス学会理事(2021年4月~)、日本レセプト学会理事(2022年4月~)
【主な業績】
(論文)
瀬戸僚馬:電子パスの課題や問題点~診療記録としての品質保証と活用を中心に~, 日本クリニカルパス学会誌, 2016; 18(1): 67-71
瀬戸僚馬:医師事務作業補助者の継続教育内容に関する日英比較, 医療秘書教育全協誌 2015; 15(1): 23-34
Seto R, Inoue R, Tsumura H. Clinical documentation improvement for outpatients by implementing electronic medical records, Stud Health Technol Inform. 2014;201:102-7
瀬戸僚馬:医師事務作業補助者の医療安全に対する責任範囲, 医療秘書教育全協誌 2014; 14(1): 22-32
(著書)
瀬戸僚馬(編者代表):電子カルテの看護記録, 日総研出版, 2017.
瀬戸僚馬(編著):医療経営士テキスト 中級シリーズ 第4巻 医療ITシステム 第2版. 日本医療企画 2016 東京.
瀬戸僚馬 編:医師事務作業補助・実践入門BOOK.東京:医学通信社 2013.
瀬戸僚馬 編:医師事務作業補助マネジメントBOOK-システム構築から運用管理、教育・指導まで 完全活用マニュアル,医学通信社,2012 東京.
瀬戸僚馬 編:師長のための看護助手・医療クラーク協働ハンドブック,日総研出版,2012.10,名古屋.
著者プロフィール詳細
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