(※画像はイメージです/PIXTA)

簡単に家族関係を崩してしまう「相続争い」。特に不動産を代々継承している地主の場合、早め早めの準備が肝要です。本記事では、次男という立場で亡き父から不動産を受け継いだ三田博氏(仮名)の事例とともに、地主の相続対策について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

私鉄駅周辺の「人気不動産」を継承した次男

三田博(82歳)は住宅地として人気の高い私鉄駅周辺の大地主である。50年ほど前に私鉄の延伸がなされ、近くに新駅が開設し街として急速な発展をとげている。

 

その昔は三田家を含むいくつかの一族が住んでおり、それぞれ農業で生計を立てていた。この数年で不動産価格も飛躍的に高騰し、周辺の地主一族は不動産賃貸業へと業種変換をしてきた。

 

駅周辺には大手不動産仲介会社や管理会社も増えており、私鉄沿線内でも人気の街として知名度が上がり移り住んでくる人たちも多いようだ。

 

三田博は次男であり、当初は不動産を継ぐ予定もなくサラリーマンとして勤務をしていたが、ちょうど60歳で退職をした年に父親から呼び出され、家督を継ぐように指示をされた。

 

父親の話によると、長男は金遣いが荒く、いろいろなところで借金を作っており父親が不動産を一部売却するなどして弁済していたこともあったそうだ。

 

博は、仕事が多忙であり実家に帰るのは年始の1回程度。兄弟に会うのもそのときだけであり、また深い話をする訳でもなく軽く挨拶する程度で、父から話を聞くまでは知らないことが多くあった。

父が「次男に」継承させた理由

父親は数年のあいだ、長男に承継させるか否か相当悩んだようであり、仮に長男に承継させると1代で不動産がなくなることは火を見るよりも明らかであることから、20代続いた三田家を存続させるためには次男を呼び戻して承継させるしかないと決断したそうだ。

 

そのときの父親はいまの自分と同じ80代であり、博は父の意向に従い、それまで住んでいた自宅を売却し、実家に戻り同居することにした。

 

同居してからは、所有している不動産について理解を深めるため父親に同席して不動産管理会社と面談したり、取引のある銀行の支店長と面談したりとその都度対応をした。

 

それと時を同じくして、それまで実家近くに住んでいた長男も事態を察したのか、遠くの他県へ移り住み、その後は連絡もつきにくくなった。

 

その後両親とも年齢を重ね、体力が衰えてきたことから専門家を招聘し、妻(博の配偶者)との養子縁組、遺言の作成、不動産建築による相続対策などを数年のあいだで実施し、父は90歳で他界した。

 

 

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