母の相続が発生、訴訟を覚悟するも…
長男の相続から約2年後、母親の相続が発生した。母親も公正証書遺言を残しており、不動産は次男一族が承継し、長男一族、長女、三男には金融資産を相続した。
相続にあたって、長女からは「独身であるし残してもしょうがないので、自分の分は長男一族と三男とに承継して欲しい」との強い要望があったことから、そのように対応を行った。
博は前回同様に、訴状が届くことを危惧していたが、なんら音沙汰もなく遺留分侵害請求の時効である1年を経過しても動きが一切ない。
その後、人伝に聞いたところ長男一家は父(三田清)の逝去後バラバラになっており、特に甥や姪は相続のことで言い争いをする両親に嫌気がさし距離を置いているとのことであった。
当然、妻には相続権はないことから非協力的な子供たちを説得することもできず、あきらめたとのことであった。
このようにして、父の相続から6年間+実家に戻ってから10年間は承継において多くの労力を費やし一旦完了することになった。
70代後半では、体調を崩すこともしばしばあり、療養することが多くなったが、引き継いだ不動産の収入は夫婦合算で約2億円程度あり、少しずつ法人化を進めながら80代に差し掛かっていた。
80代からはじめる相続対策
60代、70代は先代からの承継で多くの労力と時間を費やしてきた。80代に入り、体調も改善してきたことから、いよいよ次世代についての承継を検討することとした。
ちょうど父が私を呼び戻して対策を始めた時期であるが、正直なところ、その後の親族間での争いなどを鑑みてもスタートが遅いと感じていた。ただし、自分も同年代になっており、同様の不安を感じている。
※82歳平均余命「8.06」(出所:厚生労働省「令和4年簡易生命表」)
三田家の家族構成は以下のとおりである。
子供は長男の1人のみであり、また長男は独身であって孫はいない。長男は、長年サラリーマンとして会社勤めをしていたが、同様に退職してもらい家業を手伝ってもらうこととした。
自分が経験したような、いわゆる「争族」の心配はないが、長男から先の承継については不安を覚えている。また、法人化を行い主要な建物はすべて個人から譲渡を終えているが、土地については夫婦に残っており相続税も心配している。
父親が逝去した90歳まで生きられるとしても残り8年しかない。そこで、三田博は銀行から紹介を受けた不動産コンサルタントに相談を行うこととした。
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