(※画像はイメージです/PIXTA)

簡単に家族関係を崩してしまう「相続争い」。特に不動産を代々継承している地主の場合、早め早めの準備が肝要です。本記事では、次男という立場で亡き父から不動産を受け継いだ三田博氏(仮名)の事例とともに、地主の相続対策について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

「出し抜いたな」…長男から訴訟される

父親の葬儀のため長男へ連絡を入れると、すぐに長男は実家にやってきた。

 

帰ってきても父親のことを偲ぶどころか、故人に対して(皆にあえて聞こえるように)「俺はおやじの事を面倒看てやったのに、追い出しやがって」、博に対しては「お前は、おやじにいいように取り入ったな。うまいことやりやがって」など言いたい放題に、葬儀が終わると早々に立ち去って行った。

 

後日、作成していた公正証書遺言を遺言執行者である弁護士立ち合いもと、法定相続人を招聘して内容について伝えた。その際の同席者は図表1のとおりである。

 

出所:筆者作成
[図表1]三田家 家族構成(父親相続時) 出所:筆者作成

 

父親の意向どおり、一部の不動産については配偶者控除を考慮し母へ、そのほか主要な不動産については博と妻が共有して相続、長男と三男には遺留分を意識した一部の不動産、長女には金融資産の一部を承継させる内容であった。

 

ほとんどの相続人は初めて知る内容が多く、特に博の妻を「養子縁組」していたことには大きな驚きがあった。

 

長男と長男の妻は「(博の妻に対して)私たちのことを出し抜いて、うまくやったと思っているんじゃないの」など、多くの罵声を浴びせた。その後、長男から博に対して「きっちり請求するから、しっかり金の準備をしておけよ」と捨て台詞を残してその場から立ち去って行った。

 

残っていた、姉や弟家族は、生前父親が母親に託していた言葉にも耳を傾け納得しているようであり、博のことを支えるとの言葉もあった。

 

納税は期限ギリギリ(10ヵ月)で手続きを終えたが、その翌週長男代理人の弁護士から訴状が届いた。

4,000万円を支払い和解…「母の相続」に不安を感じる

長男からは遺留分の侵害として5,000万円の請求があった。根拠として不動産鑑定評価書を取得しており侵害している5,000万円を金銭にて支払えとの内容であった。こちらでも弁護士を立て不動産鑑定評価書を取得のうえ対抗することにした。

 

調停でもまとまらず裁判となったが最終的には和解となり4,000万円支払うことで決着した。和解までは約3年を要し、費用なども相応のものとなった。

 

ちょうど、次世代への承継も考え始めていた時期であり、取引銀行からも法人化の提案を受けていたことから、法人化に伴い捻出した資金(実質的に新たな借入分)を和解金として長男へ支払いを行った。

 

その翌年には、長男が他界(享年78歳)した。父親から相続した不動産は早々に売却していたようであり、和解金の多くも借金の返済などに充てられていたようだ。

 

葬儀には参加したが、長男の妻からは終始睨まれているような感じがあり、話しかけても無視されるだけであった。葬儀以降会うことはなくなっているが、どうやらこちらに戻ってきているようである。

 

おそらく母親の相続時に、長男の妻は直接の相続人ではないが代襲相続している甥と姪を使って、また難癖をつけようと思っているに違いない。

 

 

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