本連載は、株式会社大江戸コンサルタントの代表取締役・仲藤和弘氏の著書、『確定拠出年金が、老後破産を防ぐ!』(白夜書房)の中から一部を抜粋し、確定拠出年金(DC)を法人が活用するメリットを紹介します。

社員50人以上の会社なら導入の価値あり

「確定拠出年金」(以下DC ※)には、個人だけでなく、制度を導入する会社側にもメリットがあります。本連載では、実際に導入した例とともにそのメリットをくわしく見てみましょう。

 

本書『確定拠出年金が、老後破産を防ぐ!』の第3~4章では、DCを利用して老後の資産づくりをしていこうという人向けに、さまざまなメリットと利用方法を紹介してきました。

 

実は、DCには、制度を利用する人だけではなく、導入する側の会社にとっても、大きなメリットがあるのです。本連載では、会社側にとってのメリットについてお伝えしていきます。場合によっては、DCの導入でビルが1棟建つこともありえるのです。

 

「DCを導入すれば、ビルが建てられるだって!? そんなバカな」

「こちらは、毎月末、社員の社会保険料の支払いで四苦八苦しているんだから」

そんな中小企業の経営者の切実な声が聞こえてきそうです。

 

私も30人の社員を抱えた企業経営者ですから、経営者の気持ちは痛いほどわかります。けれども、この「DC導入で、自社ビルが建つ」というのは、あながち大げさな話ではないのです。ただし、50人以上の従業員の会社であれば、という条件は付きますが・・・。

 

※【確定拠出年金】毎月決まった掛金を積み立て、それを運用することで得られた利益(損益)と合算した金額を、将来、年金または一時金として受け取ることができる制度。会社が掛金を積み立てる「企業型」、個人が掛金を積み立てる「個人型」の2種類がある。企業型は退職金制度の一つなので、会社が導入すれば原則全員加入し、会社が掛金を積み立てる。

DCを知らない中小企業経営者は8割!?

実際に、私は、社会保険労務士を束ねる人事労務のコンサルタント会社を経営しているのですが、会社をゼロから立ち上げて10年目で、東京の日本橋に9階建ての自社ビルを建てることができました。

 

北関東のとある商工会議所での出来事もお話ししましょう。私が、助成金制度について講演したあとの懇親会の席でした。会場に集まったのは、50人から100人の従業員を抱える中小企業の経営者で、彼らは常に、「いかに会社の経費を圧縮できるか」で頭を悩ませていました。

 

そこに居合わせたU社長の悩みは、社会保険料の負担の大きさについてでした。「社会保険料がべらぼうに高い。毎年のように上がって、会社の利益をみんな国に持っていかれる・・・」というのです。

 

私が「確定拠出年金をご存知ですか?」とたずねると、U社長は怪訝な顔で言いました。「まあね、名前くらいは知っていますけど・・・」それが、何か? と言わんばかりの反応です。

 

そこで、企業型DCについて詳しく説明すると、U社長は目を丸くしました。「なんだ、俺は何も知らなくて、社会保険料の節約をし損なっていたわけだ。もっと早く知っていればビルの一つも建っていたじゃないか!」

 

私の実務上の経験では、U社長のように、DCについて知らない中小企業の経営者は、全体の8割を超えています。「どうせ負担は変わらないのだから、今までと同じ、確定給付型年金でかまわないよ」U社長もこう思っていました。

 

私から言わせれば、これほどもったいないことはありません。

 

まず、結論から言うと、あなたが経営者だった場合、U社長が指摘したように、DC制度を導入すると、10年後、あなたは、もう一つ自社ビルを増やすことができます。「そんなことは不可能だよ」そうおっしゃる方もいるでしょう。でもこれは、実際に実現可能な話なのです。

 

次回は、実際にビルが建つまでをシミュレーションをします。

本連載は、2016年10月10日刊行の書籍『確定拠出年金が、老後破産を防ぐ!』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

確定拠出年金が、 老後破産を防ぐ!

確定拠出年金が、 老後破産を防ぐ!

仲藤 和弘

白夜書房

■確定拠出年金のプロがやさしく解説! 確定拠出年金は、老後の資産づくりにとても優れた制度です。著者は社会保険労務士など専門家を束ねたコンサルティング会社を経営し、これまで企業の確定拠出年金導入の手伝いをしてき…

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