転職先の選定基準に「DC制度の有無」も含まれる!?
ある日、会社に1本の電話がかかってきました。
「本当に、御社にはDC制度があるのですか?」
かけてきたのは、某大手企業の会社員、Vさんです。
「ありますよ。7年前から、うちはDCを導入しています」
私は、即答しました。私のようなコンサルタント会社で、DCを導入しているところはまずないですから、彼も最初は、半信半疑だったようです。
転職活動をしていたVさんは、前の会社で企業型DCに加入していました。Vさんは、DC制度の優位性をよく理解していて、今まで積み立てたお金を運用し続けたかったので、転職先を決めるときの条件に、DC制度があることを挙げていたのです。しかし、導入している中小企業は皆無だったと言います。
結果的に、Vさんは、私の会社に就職してくれました。大手企業から中小企業に、転職してきてくれたのです。DC制度が、優秀な人材集めに一役も二役も買うということを、私は身を持って味わいました。
Vさんのように、転職の際に、DC制度があるかどうかを条件に入社してくれた優秀な人材は、私の会社には何人もいます。
制度を導入するだけで「優秀な人材を集められる」ということは、リクルーティングにかかる費用も削減できるということです。DCのメリットは、会社にとって計り知れないのです。
「人材が集まり、定着率が上がった」
今度は、建築設計会社、日本建築構造センター株式会社のお話をしましょう。
数人の建築士がはじめた建築設計事務所ですが、年々規模を拡大し、今では、建築関連の人材派遣業務も行っています。現在、社員が100名を突破し、ここ数年で20代、30代の若手社員が急激に増えてきて、「彼らの将来のことや福利厚生などについて、どうしたらいいだろうか」と悩みを抱えていたときに、当社からDCの提案を受けたそうです。
既存の年金制度では、余力のない会社にとっては、非常に負担が大きいのです。また、退職金制度を充実するのも至難の業です。大企業並みに福利厚生を手厚くすることは、財政面でも、人材的にもハードルが高いのです。それが、優秀な人材を確保するときの課題となっていました。
会社にとっても、社員にとっても負担が少ないDCは、急成長を遂げている会社にとって、メリットが大きいと言えます。日本建築構造センター株式会社が取り入れているのは、希望する人だけが加入できる選択制です。会社は、制度利用の希望者に、月3000円を拠出。あとは、個人が自分で拠出金額を上限金額までの範囲で、自由に決めています。
日本建築構造センター株式会社の井口執行役員は言います。
「DCを完備していることは、ハローワークでの募集など求人の際にも、福利厚生として謳えます。長く勤め続けてほしい社員にも、社員を大切にしている会社の姿勢や、将来性を感じてもらうことができているようです。これから30代の社員がもっと増えていくでしょう。家族を持ちはじめるような世代には、本当に必要なシステムだと思います。お互いの負担はそれほどないのに、最後には、社員にとってよいことがある。DCは、会社にも社員にもメリットのあるよい制度だと思いますね」
「前の会社でやっていたので」と継続して加入する人も、日本建築構造センター株式会社ではちょくちょく増えているようです。今後、DC制度は、世の中の認知度も上がっていき、導入する中小企業も利用者も、格段に増えると思われます。早くから導入していたということが、ゆくゆくは、会社の信用を高めることにもなるでしょう。
「人材が集まり、定着率が上がる」だけでなく、他にも、DCのメリットとして、「福利厚生のよい会社と評判が上がった」ということを挙げる経営者もいます。