加入者は会社員の「7人に1人」に過ぎない企業型DC
現在、企業型DCを導入している会社は、2万3000社を超え、加入している人の数は580万人近くにのぼっています。(2016年5月末現在、厚生労働省調べ)年々、増加しているとはいえ、それでもなお、導入しているのは大手企業がほとんどです。中小企業では、まだまだ導入しているところは少ないのです。すべての会社員のなかでは、加入者はまだ7人に1人という割合です。
本連載で述べてきたように、DCは、会社員や個人にとって、圧倒的に有利な老後の資産づくりが叶う制度です。会社にとっても、社会保険料の大幅な削減や、退職金制度に替えることで過去金債務の圧縮が実現できる制度です。
双方にとって、これだけのメリットがありながら、まだまだ普及していない最大の理由は、認知度の低さ。PR不足、それに加えて制度を正確に説明できるスタッフを豊富に抱えるコンサルタント会社や金融機関はほんの一握りだからです。
あなたの会社の社長は、DCのことを知っていますか?
もし、「自分の会社には関係ない」と思われているのなら、これほどもったいないことはありません。会社の担当者(人事部、総務部、経理部のいずれかだと思います)に導入を進言してみてください。DCの導入は、思うほど難しくないこと。導入することによるメリットが分かれば、実現する可能性も一気に高まるはずです。
転職組の社員の要望でDCを導入したグリー
2015年、モバイルインターネットサービスの大手、グリーがDC制度を導入しました。導入理由は、社内に多い転職組の社員から制度の導入を要望する声が挙がってきたためだそうです。
グリーでは、福利厚生として住宅費やモバイル機器の購入代金、昼食代の一部補助といった制度があるだけでした。創業間もないIT系の会社の多くは、どこも同じようなものだと思います。
同社では会社拠出はなく、加入を希望する社員が、会社が設定したコースの中から掛金を選択しています。加入率は約4割。20代から30代の結婚や子育て世代の多い会社にもかかわらず、これだけ加入しているということは、それだけ老後への意識が高まっていることの現れなのではないでしょうか。
報道によればNTTグループや東芝の国内グループ会社も続々とDCを導入しており、今後もこの流れは続くと予想されます。
会社負担が少なく個人メリットが最大の「ユニクロ方式」
DCユニクロでは、退職金制度を「前払退職金」として受け取るか、「DCへの掛金」として積み立てるかを選択することができます。会社は退職金として毎月の給与に「前払退職金」として上乗せ支給し、各自が「今、給与として受け取る」か、「DCへ拠出し将来受け取る」かを選択できる制度を設けているのです。
これが選択制DCのはじまりと言われ、現在この選択制を選ぶ会社が増えています。選択制DCは、「ユニクロ方式」と呼ばれ、会社側の負担を少なく、個人がDCのメリットを最大限享受できるしくみになっています。
企業型DCにはいくつか種類があり、どの制度がよいかはその会社により異なります。実際に導入する際にはDCに精通したプロに相談するのがよいでしょう。ここでは簡単に、企業型DCにはこのようなものがある、ということだけお伝えしておきます。
①全額会社が拠出するパターン
退職金の代わり/大企業に多い。給付型から一部、こちらに変更するケースが多い。
②全額本人が拠出するパターン
選択制(ユニクロ方式)/会社は手数料のみ拠出。中小企業に多い。給料で受け取るか、拠出金とするかを社員が決める。
③全員加入会社拠出前提で、加えて個人が拠出を追加できるパターン1
マッチング拠出/会社は一定額を拠出。個人の拠出額は、会社が拠出する金額を上回れない。
④全員加入会社拠出前提で、加えて個人が拠出を追加できるパターン2
選択制/会社は一定額を拠出。個人も会社掛金を除いて掛金の限度額の範囲内で拠出してよい。会社が拠出する金額を上回ってもよい。