非正規労働者も、一定条件を満たせば「厚生年金」に加入できる
日本の公的年金制度は2階建てです。1階部分は全員が加入する国民年金、2階部分はサラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む。以下同様)が加入する厚生年金です。
もっとも、非正規労働者(パートやアルバイト等)でも、一定の要件を満たせば年金制度上はサラリーマンとして扱われ、厚生年金に加入することになります。要件は複雑ですが、ザックリというなら「大企業で週20時間以上働くか、中小企業で週30時間働く」というイメージです。
サラリーマンの配偶者の話は後述しますが、それ以外の非正規労働者は、厚生年金に加入するメリットがあるので、可能であれば厚生年金に加入しましょう。
第一のメリットは、老後資金の不安が和らぐことです。厚生年金に加入すると、老後に受け取れる年金が上乗せされますから。
第二のメリットは、年金保険料が安くなる可能性があることです。国民年金の保険料は一律で年間約20万円ですが、厚生年金の保険料は年収の9%強で、これを払えば国民年金の保険料も払ったことになるのです。したがって、年収が200万円程度であれば、厚生年金の方が、保険料が安いのです。
厚生年金保険料は全体で18%強なので、年収200万円ならば36万円強なのですが、残り半分の9%強は雇い主の負担なのです。自己負担が安くなるなら利用したいですよね。
第三のメリットは、配偶者の年金保険料が助かる可能性があることです。これを理解するためには、国民年金保険料の負担について理解する必要があります。
国民年金制度は、加入者を3つのグループに分けています。第一はサラリーマン、第二はサラリーマンの専業主婦(主夫を含む。以下同様)、第三はそれ以外、です。
非正規同士で結婚→片方が厚生年金に加入→とってもオトクに!
上記のように、サラリーマンは厚生年金保険料を支払うことで、国民年金保険料も払ったことになります。サラリーマンの専業主婦は、配偶者が厚生年金保険料を支払うことで、自分も国民年金保険料を払ったことになります。それ以外の人は、自分で国民年金保険料を支払う必要があるのです。
サラリーマンの専業主婦は、自営業者の専業主婦や独身者等と比べて優遇されているのです。筆者としては、これは不公平なので制度を変更すべきだと考えていますが、本稿ではそのことは忘れ、非正規労働者がどう行動すべきかを考えましょう。
非正規労働者が独身であった場合、上記のように厚生年金に加入するほうが得です。非正規労働者に配偶者がいて、配偶者がサラリーマンでない場合は、独身者と同様の扱いなので、厚生年金に加入するほうが得です。配偶者がサラリーマンである場合については、後述します。
本稿が強調したいのは、非正規労働者と非正規労働者が結婚して、片方が厚生年金に加入すると非常に得をする、ということです。非正規労働者は所得が低い人が多いため、結婚を諦めている人も多いようですが、意中の人がいるなら、ぜひ本稿を読んでもらって将来について語り合っていただければ幸いです。
意中の人がいない場合でも、本稿を読んで「自分は非正規労働者だから、別の非正規労働者と結婚して得をしたい。相手を探そう」と思い立っていただけるなら、それもいいですね。
サラリーマンとは見なされない独身の非正規労働者は、国民年金保険料を払っています。その場合、受け取れる年金額は最大で6万6,000円程度です。なかには払っていない人もいるでしょうが、その場合は老後に年金が受け取れなかったり、大幅減額されたりするので、可能な限り払うようにしましょう。
2人の独身が国民年金保険料を払っているとすると、合計で年間40万円強です。2人が結婚して片方が厚生年金に加入すると、2人合計の保険料が20万円より安くなるのです(年収が200万円程度までの場合)。
サラリーマンの専業主婦でも、厚生年金への加入がお勧めなワケ
問題は、サラリーマンの専業主婦です。働く時間を制限すれば、年金保険料を払う必要がないのに、厚生年金に加入すると保険料の支払い義務が生じてしまうからです。それでも、筆者は厚生年金への加入をお勧めします。
いまは保険料の支払いが苦しいとしても、平均年齢まで生きれば老後に受け取れる年金で元が取れます。損得の問題以上に重要なのは、「保険機能」です。公的年金は「長生きしている間にインフレが来て老後資金が底を突いてしまうリスク」に対する大変心強い味方なのです。
加えて、配偶者と離婚したり死別したりするリスクに対しても保険となります。そして、配偶者が失業した時には絶大な力を発揮します。サラリーマンの専業主婦は、配偶者が失業すると、2人とも国民年金保険料を払う義務を負いますが、専業主婦が厚生年金に加入していれば、自分はもちろん、配偶者も国民年金保険料を支払う義務を免れるからです。
本稿は以上ですが、意思決定は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
塚崎 公義
経済評論家
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