富裕層にも、富裕層を目指す人にも読んでほしい
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「退職金=ごほうび」という思考に陥りがちだが…
サラリーマンの多くは、定年退職日に退職金を受け取ります。いままで手にしたことのない大金を受け取って気分が高揚する人も多いでしょう。しかし、冷静になりましょう。
「退職金が出たから、いままで自分を支えてくれた配偶者への感謝の気持ちを込めて豪華客船で世界一周旅行へ行こう」などと考えるのは危険です。
退職金を「永年勤続に対する会社からの褒美」と考えると、自由に使ってもいいように感じますが、退職金は今後の長い老後生活のための大切な資金なのです。多額の浪費をするようなことになれば、あとから激しく後悔することになるでしょう。
感謝の旅行は国内の温泉くらいにしておきましょう。そして、温泉でくつろぎながら、ゆっくり老後の生活設計について話し合えばいいのです。なぜ、世界一周ではなく温泉旅行にしたのか、理由をしっかり説明するよい機会になるでしょう(笑)。
退職金を「社内預金の満期」だと考えると、気分の高揚による贅沢は抑えられるかもしれません。「自分の給料は、本当はもっと高かったのだが、会社が勝手に天引きして社内預金をしていたのだ。それが満期を迎えて戻ってきたのだ」と考えるのです。
「意思が弱くて老後資金を貯められない自分のために、会社が給料から天引きして強制的に社内預金をしていてくれたのだ」と考えて、会社の「親心」に感謝し、それに応えるべく、大事に老後資金を守っていくことを自分に誓えばよいのです。
「急に金融資産が増えた」と勘違いしてはダメ!
退職金が銀行に振り込まれると、急に金融資産が増えるわけですから、「こんなに銀行預金があるなら、少しは株でも買おうかな」と思うかもしれません。筆者としては、老後資金の一部は株や外貨等に振り分けるべきだと考えていますから、そのこと自体には賛成です(拙稿『恐ろしい…日本政府の財政破綻を心配する人にわかってほしい、「さらに懸念すべきリスク」の正体』参照)。
しかし、一気に多額の株式や投資信託を購入するのは危険です。あとから振り返って、購入した日が株価の高い日であった…という可能性があるからです。毎月少しずつ購入すれば、高い日も安い日も購入することになるため大儲けは狙えませんが、大損のリスクも避けられるでしょう。
気をつけるべきは、銀行からの投資信託販売です。銀行は、退職金が振り込まれるので、誰がいつ退職して気分が高揚しているか容易に想像がつくため、絶妙のタイミングで投資信託の販売攻勢をかけることができるからです。
大金を手にして気分が高揚し、株でも買おうかと考えているときに、銀行の支店長室に招かれて、支店長からうやうやしく「お勧めの投資信託、ございます」などと購入を促されたら、つい大金を投じて買ってしまいそうですね。
支店長に頭を下げられて興奮して買ってしまう人もいるでしょうし、「支店長に頼まれたのに断るのは申し訳ない」と考える人もいるでしょう。
しかし、冷静になりましょう。一度に多額に投資するのは危険なのです。そして考え直しましょう。「支店長が頭を下げているのは、私に対してではなく、私の退職金に対してなのだ」…と。
退職金受領後の金融資産をイメージしよう
退職金が社内預金の満期だという考え方は、とても便利です。退職日に冷静でいられる、というだけではありません。退職前から心の準備や実際の準備ができるからです。
退職の前日には、金融資産の全額が株式投信になっていても構いません。今日の金融資産は偏っていますが、明日になれば正常になるのですから。そうであれば、発想を転換しましょう。「自分は少額の株式投信と多額の社内預金を持っている。自分の金融資産のバランスは問題ない」と考えるのです。
そして、遡って退職の何年も前から少しずつ投資信託を積み立てていくのです。他人から「金融資産が投資信託に偏りすぎている」と思われるくらいでちょうどよいのです。退職前日に銀行預金がゼロになるようなペースで積み立て投資をすればよいのですから。
さらにいえば、住宅ローンの繰上げ返済も不要かもしれません。住宅ローンを繰上げ返済するお金があるなら、それを使って投資信託の積立投資をすればよいのです。
低金利時代ですから、住宅ローン金利は高くないはずです。急いで返さなくても、ゆっくり退職金で返せばいいでしょう。多額の住宅ローンが残っていても、「社内預金」との兼ね合いで考えれば気にする必要はありません。
それより「住宅ローンの繰上げ返済を急いだ結果、退職前日の金融資産がほとんどなかった」という事態を避けましょう。退職前日の金融資産が「社内預金」だけで、退職当日の金融資産が銀行預金だけ、というのでは、老後資金がインフレのリスクに晒されています。それを修正するために焦って投資信託を買うのも上記のようにリスクなのですから。
本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義
経済評論家
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