銀行員「金利4%の定期預金、ご案内できます」…うやうやしく提案も、商品設計の〈あんまりな前提条件〉に経済評論家「ひたすら悲しい」

銀行員「金利4%の定期預金、ご案内できます」…うやうやしく提案も、商品設計の〈あんまりな前提条件〉に経済評論家「ひたすら悲しい」
(※写真はイメージです/PIXTA)

金利のある世界が戻りつつあるといっても、銀行預金の金利は「ほぼゼロ」のまま…。政府による「貯蓄から投資へ」のかけ声もあり、本格的な資産形成を考え始めた人も多いでしょう。しかし、人任せにしてばかりでは、想定外の結果になってしまうかもしれません。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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銀行から高金利な定期預金の提案→「もしかしておトクな話!?」

銀行に預金しても、ほとんど金利がつきませんが、時として「金利4%の定期預金をいかがですか」などと銀行から勧誘を受けることがあります。当然ですが、銀行は慈善事業ではありませんから、単なる「プレゼント」ではありません。

 

「100万円の投資信託を購入してくださった方には、特別に金利4%の3ヵ月定期預金を同じ金額だけご用意いたします」といった「セット販売」になっているわけです。そして、投資信託の販売から得られる利益が高金利定期の金利より多いから、そうした勧誘をしているわけですね。

 

筆者は、投資信託に否定的ではありませんから、客がいいものを購入して、「おまけ」がもらえるなら、Win-Winの関係だともいえそうですが、気になる点が2つあります。

 

ひとつは、1度に多額の投資信託を買うより、毎月少しずつ積み立てる方がリスクが少ないのに、1度に多額の投資信託を買うように勧誘されていることです。買った日が株価の安い日ならいいのですが、たまたまその日が株価の高い日であるリスクもあるわけですから。

 

もうひとつは、定期預金と投資信託のセット買いは損だ、ということです。この点については、後述します。

「金利4%の3ヵ月定期」→もらえる金利を計算すると…

金利4%の定期預金と聞くと、100万円が104万円になるように感じる人もいるでしょうが、そうではありません。「1年間預けてもらえれば4%の金利を支払いますが、3ヵ月定期であれば元本の1%の金利です」ということなので、金利は1万円しか受け取れないのです。しかも、税金を20%強差し引かれますから、手取りは8,000円弱です。

 

「3ヵ月経過すると定期預金は自動継続されますが、自動継続後の定期預金は普通のもの(つまり金利はゼロ付近)です」ということになると、解約のために店頭に赴く電車賃にもならないでしょう(笑)。

悲しい…客の「情弱っぷり」を見越した商品設計

銀行員であれば上記を感覚的に理解しているでしょうが、一般の預金客は「金利4%」というとすごく得をするように感じるので、「それなら投資信託を買おう」と考える客も多いのでしょうね。

 

それ以前に「おまけ」に弱い顧客も多いのかもしれません。「いまだけの特別なキャンペーンです」などといわれると、おまけをもらえるチャンスを逃したくない、と考える顧客も少なくないのでしょう。

 

筆者が悲しいと感じるのは、上述のセット販売が「情報弱者の顧客に投資信託を販売するための仕組み」だということです。もしも顧客の多くが情報強者であれば、別の商品設計がなされていたはずだからです。

 

投資信託の販売手数料が3%だとすると、銀行は1万円の金利を支払って3万円の手数料を得るので、2万円の利益です。客は、3万円の手数料を支払って8,000円弱の金利を得るので2万2,000円強の出費です。差額の2,000円強は税務署の利益になっているわけです。

 

顧客の多くが情報強者であれば、「100万円以上の投資信託を購入していただければ、手数料を2.1%におまけします」という商品が開発されたはずなのです。それであれば銀行の収入は2万1,000円、顧客の出費も2万1,000円、税務署の利益はゼロ、となるのですから。

銀行はいまなお、投信等の「販売手数料収入」に注力している

余談ですが、銀行側の事情として、本業で儲からないから投資信託や保険の販売で手数料を稼ごうと頑張っている、ということは知っておいていただきたいですね。

 

銀行の本業は低い金利で預金を集めて高い金利で貸し出して、金利の差で儲けることなのですが、いまはそれが難しいのです。低成長時代において企業の設備投資等があまり活発ではないので、借り入れ需要が少ないのです。むしろ、「利益のうちで配当に使わなかった分は銀行借り入れの返済に使おう」という企業も多いので、貸し出しが減っていく可能性もあるわけです。

 

そこで、各銀行が貸出金利の引き下げ競争をしているわけですが、すべての銀行が貸出金利を一斉に下げたとしても、貸し出し全体はそれほど増えないので、結局銀行の利益は減っていく、ということが起きているわけです。

 

それに加えて、銀行間で資金を貸し借りする際の金利が低いですから、預金を集める必要はあまりないのですが、預金部門を解散してしまうわけにもいかないので、預金部門の費用が「無駄」になっているのです。

 

そこで、預金部門に来る客に投資信託や保険を販売して手数料を稼ごう、と考えているわけですね。預金部門の人は、「どの客が何円持っていて、いつ退職金が振り込まれたか」といった情報を持っているので、勧誘の際に他の金融機関より圧倒的に有利だ、というわけです。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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