なぜコーラは世界で最も有名なブランドになったのか
2010年、コカ・コーラはユーチューブである動画を配信した。「ハピネス・マシーン」というタイトルで、実在の大学に設置されたコーラの自動販売機が登場する。この自販機には細工がしてあり、コーラを買うと、無料のコーラや、花束、サンドウィッチといったプレゼントが出てくるようになっている。
プレゼントを受け取った学生たちの様子を隠しカメラで撮影したその動画は、再生回数があっという間に300万回を超えた。「楽しい」「嬉しい」といった「いい気分」が、依然としてコカ・コーラのDNAの中心的な存在であることを主張しているようだ。
「ハピネス・マシーン」の動画はその後も30種類ほどが作られ、そしてオリジナルの発表から1年後、今度は「ハピネス・トラック」という動画が発表された。撮影場所はブラジルのリオデジャネイロだ。
今度の動画に登場するのは、自販機ではなくコカ・コーラのロゴが入った赤いトラックで、オリジナルよりもさらに楽しいものをプレゼントしてくれるーーたとえば、サッカーボール、ビーチボール、それにサーフボードまであった。そしてもちろん、無料のコークももらえる。
コーラが健康によくないことは、今となっては誰でも知っているが、それでも世界中でたくさんの人がコーラを大量に消費している。消費量はむしろ増えているくらいだ。そしてコーラの消費の増加に呼応して、同じように「即席の快楽」を提供してくれる他の商品への需要も増えている。
たとえばテレビの視聴は、ここ50年で飛躍的に増加した。アメリカを例にとると、平均的な家庭が1日にテレビをつけている時間は7時間だ。アメリカ全体では、1年で2,500億時間テレビを見ていることになる。これと同じ時間を労働にあてると、たとえ最低賃金でも1兆2,500億ドルの収入だ。それだけの経済成長が、テレビの視聴によって失われたという計算になる。
また、アメリカの平均的なティーンエイジャーを見てみると、学校で過ごす時間が1年で900時間であるのに対し、テレビを見る時間は1,500時間だ。それなのに、ほとんどのアメリカ人は、自分がテレビの見過ぎだとは思っていない。
[注2]コカ・コーラの広告戦略の裏にいる天才たちは、この自己愛過剰社会ではみんなが自分をよく思いたがっているということを知っている。そのおかげでコークは世界でもっとも有名なブランドになれた。全世界の人口の94%がコークのロゴを知っている。こんなに人気があるのは本当においしいからだと思うかもしれないが、しかしペプシの味はそこまでコークより落ちるだろうか? コークの成功は、あるといわれている秘密のレシピのおかげではない。巧妙なブランド戦略と、人々の自己愛を刺激する術に長けているからだ。
また、ここ数十年は、自己啓発マーケットが急激に成長した時期でもある。自己啓発の本、CD、セミナー、ワークショップなどが次々と登場し、自信を高めるさまざまな方法が提唱されてきた。2005年から、リーマン・ショックの起こった2008年にかけて、自己啓発関連の消費は14%近くも増加した。自己啓発業界はそれ以降もさらに成長を続け、現時点では110億ドル規模の市場になっている。
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