自信と実力は違う
自信があれば成功できるのか?
偉人の伝記を読むと、よく「誰よりも自信があったから成功できた」というようなことが書いてある。その一方で、才能や努力は過小評価されがちだ。まるで、ただ自分を信じる強い気持ちさえあれば、誰でも大きな成功を達成できるとでも言っているかのようだ。
それに雑誌や人気ブログでも、自信さえあれば成功できるような論調が幅をきかせている。具体的な例をいくつか見てみよう[注1]。
[注1]グーグルで「自信成功」で検索してみれば、同じような例が山のように出てくる。
「自信さえあれば、どんな目標も達成することができる。しかし自信がなければ、成功する可能性はゼロだ」
「自分自身を愛していれば、完璧な人生を送ることができる」
「自信のある人は誰からも尊敬される─自信は人生でもっとも大切な資産であり、自信さえあれば幸せも成功も必ず手に入る」
「自信は誰でも手に入れることができる。そして自信があれば、人生のすべての問題は解決できる」
「自信のある人は、自信のない人に比べて成功する確率が10倍高くなる」
考え方に潜む3つの大きな問題
第1に、そもそも自信を高めるのは簡単ではないということ。
もし簡単だったら、誰も自信のなさで悩んだりしないだろう。のどの渇きや空腹を癒すように、自信のなさもあっという間に解決できるはずだ。
第2に、たとえ意図的に自信を高めることができたとしても、それで成功できるわけではない。
伝記作家や自称「専門家」たちの主張とは裏腹に、バラク・オバマが黒人初のアメリカ大統領になれたのは自信があったからではない。サー・リチャード・ブランソンがヴァージン・グループを創設し、実業家として大成功したのも自信があったからではない。マドンナが3億枚のレコードを売り上げたのも自信があったからではないし、マイケル・ジョーダン、モハメド・アリ、ロジャー・フェデラーが、それぞれのスポーツで絶対的な王者になれたのも自信があったからではない。
彼らのような傑出した存在は、たしかに自分に自信を持っている。しかしそれは、傑出した実力があるからだ。傑出した実力は、非凡な才能と、それを上回るほどの努力があって初めて手に入る。実際のところ、彼らの自信がその他大勢の自信と違う点は、たった1つしかない。
それは、実力を正確に反映した自信であるという点だ。そこが、本物の成功者と、ただ過剰な自信があるだけで実力はない人たちとの大きな違いだ。
そして第3の問題は、おそらくいちばん深刻な問題だろう。
自信さえあれば何でも達成できるという幻想のせいで、誰でも自信をつけて成功しなければならないような風潮が生まれ、それが大きなプレッシャーになっている。その結果、自信のない人は自分が悪いような気分になり、そして自信家は分不相応の大きな目標でも実現できると勘違いしてしまう。
自信はあまりにも過大評価されている。そのため私たちは、自信を手に入れるためならどんなことでもするような勢いだ。「できる気になる」ことと、「実際にできる」ことを同じに扱っている。その結果、私たちの社会は、自信と自己顕示だけで中身の伴わない人間を量産することになってしまった。
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