自信のある人は勘違いしているワケ
何か難しいもの、たとえば代数などについて、どれくらい得意か尋ねられたとしよう。たいていの人は、平均より上だと答えるはずだ。そしてもちろん、大多数の人が平均より上になるのは不可能だ。
この「自分は平均より上だ」という思い込みは、自分をよく思いたいという無意識の欲求から来ている。この欲求はたいていの人が持っているだろう。
実際、自分の能力を過大評価しないのは、自信のない人だけだ。つまり、もしあなたが「平均より上」という幻想を持っていないのなら、ほとんどの人よりも勘違いが少ないということになる。
驚くべきことに、この「自分は平均より上」という勘違いは、あらゆる分野で見ることができる。
たとえば、ほとんどの人が、自分の記憶力は平均より上だと考えている。健康状態でも同じだ。また、ほとんどの管理職は、自分はリーダーとしてもビジネスパーソンとしても平均より上だと考えている。
サッカー選手などのプロアスリートも、自分の能力は平均より上だと評価している。そして私たちのほとんどが、自分と恋人との関係は平均より上だと考えている。
この「平均より上」バイアスが、特に顕著に見られる分野がある。
たとえば、車の運転の能力に関しては、90%の人が自分は平均より上だと考えている。高校生の90%は、自分の社交スキルは平均より上だと考えている。そして大学教授のほぼ100%が、自分の教える技術は平均より上だと考えている。
もちろん、平均より上という自己評価が正しい人も中にはいるだろう。しかしたいていの人は、自分の実力を過大評価している—そもそも、90%から100%の人が平均より上になるのは不可能だ。原則的に、平均より上の人と下の人の数はだいたい半々になるからだ[注1]。
それに加えて、自分を「平均より下」と評価した人たちの中にも、実際は平均より上の人だっているはずだ。その事実を考慮すると、「平均より上」と評価した人たちの勘違いっぷりがさらに明らかになる。
[注1]もちろん、ほとんどの人が平均より上になるケースもまったくないわけではない。たとえば、ほとんどの人が平均より足の本数が多い。少数ではあるが、足が1本の人、または足のない人がいるために、平均が2本より少なくなるからだ。また、これとは逆のケースで、ほとんどの人が平均より下になることもある。この一般的な例が収入だ。たいていの人が平均より収入が低い。ごく一部の超高収入の人が平均を押し上げているからだ。とはいえ、たいていのケースで平均値はだいたい中央値と同じくらいになっている。
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