(※写真はイメージです/PIXTA)

「公的年金は頼りにならない」近年ではそんな声がしきりに聞こえてくるようになり、また、公的年金を軽視して、保険料の支払いを無視する人もいるようです。しかし、公的年金は長生きにもインフレにも対応する、ありがたい制度なのです。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

1階部分は全員が加入、2階部分はサラリーマンが加入

日本の公的年金制度は「2階建て」になっています。1階部分は全員が加入する国民年金、2階部分はサラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む。以下同様)が加入する厚生年金です。

 

国民年金は、現役時代に年金保険料の払い漏れがなければ全員が65歳以降に毎月6万6,000円の年金(老齢基礎年金)を受け取れる、という制度です。複雑なのは、現役世代がサラリーマン、サラリーマンの専業主婦(主夫を含む、以下同様)、それ以外という3つのグループに分けられていることです。

 

サラリーマンは、給料から厚生年金保険料が天引きされていることで、国民年金保険料も払ったものとして扱ってもらえます。サラリーマンの専業主婦は、配偶者が給料から厚生年金保険料が天引きされていることで、自分も国民年金保険料を払ったものとして扱ってもらえます。

 

それ以外の人(自営業者、自営業者の専業主婦、失業者、学生等々)は、自分で年金保険料を払う必要があります。払い漏れがあると老後に受け取れる年金が減りますから、しっかり支払いましょう。

 

払えない場合には、無視をせず、「払えなくてスミマセン」という書類を提出しましょう。書類を提出するだけでも何もしないより遥かにいいことがあるかもしれませんから、面倒だと思わずに提出しましょう。

 

2階部分の厚生年金は、サラリーマンが老後に受け取れる年金です。現役時代の所得が高かった人は現役時代に支払う保険料が多い一方で老後に受け取れる年金も多いのが原則です。給料が高い人は生活費が膨らんでいるので老後資金も多く必要だろう、ということのようです。したがって、人によって受け取れる額は異なりますが、標準的なサラリーマンは65歳以降に毎月9万円程度受け取れるとされています。

 

標準的なサラリーマン夫婦は老後に毎月22万円程度の年金が受け取れますから、贅沢をしなければ何とかなりそうです。年金は老後資金の最大の柱なのです。自営業者夫婦は、毎月13万円強の年金だけで暮らすのは難しいでしょうが、それでも年金が老後資金の重要な柱であることは間違いないでしょう。

 

余談ですが、日本の年金制度全体としては3階建になっています。3階部分は各自が自由に契約できる私的年金ですが、その中にはiDeCoという税制上有利な制度もありますから、興味のある方は拙稿『さすがの節税効果! 3分でわかる「NISA」「iDeCo」のすごいメリット【経済評論家が解説】』を併せてご覧いただければ幸いです。

正直、ありがたい…「長生き」「インフレ」に対応

公的年金は、金額的に老後資金の重要な柱であるのみならず、老後資金の最大のリスク(長生きしている間にインフレが来て老後資金が枯渇してしまう可能性)に対する備えとしても最強です。

 

年金は、どれほど長生きをしても最後までしっかり払ってもらえます。しかも、インフレが来ても、原則としてその分だけ年金支給額が増えるので安心です。

 

年金制度は、自分たちが支払った年金保険料を老後に自分たちが受け取る制度にはなっていません。現役世代が支払った年金保険料を高齢者たちが山分けするというのが基本的な制度設計です。

 

平均寿命より早く亡くなった人が受け取るはずだった年金を、平均寿命より長生きした人が受け取るので、どれほど長生きしても最後まで受け取れるのです。

 

インフレになると、高齢者の生活費が嵩みますが、現役世代の給料が増えることになります。そのため、現役世代が支払う年金保険料を値上げすることによって、高齢者に支払う年金を増額することができるのです。

少子高齢化で「年金受給額が減少」する…?

現役世代が高齢者の年金を負担する制度は、上記のようにインフレに強いというメリットがある一方で、少子高齢化には弱いというデメリットがあります。年金保険料を支払う現役世代が減っていく一方で年金を受け取る高齢者が長生きするために年金財源が不足しかねないわけです。

 

そのため、将来の高齢者が受け取れる年金はインフレ調整後で現在の高齢者より少なくなる可能性が高いでしょう。もっとも、年金だけで生活する場合の水準が現在の高齢者より1割か2割低い、といった程度ではないでしょうか。

 

それさえも、起きないかもしれません。1つには、多くの高齢者が元気で働くようになると、年金保険料を今より長い期間にわたって払ってもらおう、という制度改正がなされるかもしれないからです。もう1つには、読者自身が定年後も長く働くことで年金受け取り開始年齢を繰り下げることにより、毎月受け取れる年金の額が増額になるからです。

公的年金は破綻しない。だから、しっかり頼ろう

「今の若者は、年金保険料を支払っても将来は年金が受け取れないのだから、支払うのは無駄だ」などと言う人もいるようですが、年金の専門家の中には殆どいないでしょう。筆者も、そんなことはないと思います。

 

1つには、上記のように「65歳、あるいは70歳まで年金保険料を払い続けるように」という制度改正がなされる可能性が高いと考えているからです。もう1つには、筆者が総理なら年金は何があっても払うからです。年金支給をやめると次の選挙で落ちるから、という「シルバー民主主義」的な理由もありますが、より重要なのは、年金の支給を止めると生活保護の申請が激増して、財政がかえって悪化するからです。

 

そうであれば、個人としては老後資金の柱である年金をしっかり頼ることが重要です。そのためには、具体的には、

 

●自営業者等は、年金保険料をしっかり払う

●定年退職後も働いて年金保険料を払う

●専業主婦も働いて、厚生年金に加入する

●年金の受取開始時期を遅らせて、毎月の受取額を増やす

 

上記を心がけるといいと思います。年金の受取開始時期については、別の機会に詳述します。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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