上場株への投資は「期待値がプラス」になるワケ
上場株の価格、とくに大型株の場合には、プロ同士の取引で決まると考えてよいでしょう。したがって、多くの場合は「おおむね妥当な価格が成立している」と考えられます。
では、株価の変動を「企業収益の変動」と「その他の要因」に分けて考えてみましょう。
上場企業の決算を長期にわたって眺めると、平均はプラスになっているので、企業収益の期待値(確率的には、といった意味です)はプラスだといってよいでしょう。
じつは、それには理由があります。企業経営者が臆病(慎重?)だからです。
企業経営者は「10儲かるか10損するか、確率が五分五分」であるような投資案件には手を出しません。多くの経営者が「14儲かるか10損するか、確率が五分五分」という投資案件なら前向きに考える、という状況なら、ちょっと大胆な経営者は容易に「12儲かるか10損するか、確率が五分五分」の投資案件にありつくことができるのです。企業が黒字なら、株式投資家は配当が得られるか、株価の値上がり益を得られる可能性が高いでしょう。
仮に企業収益がゼロだとしても、株式投資の期待値はプラスになるはずです。株式投資のプロも、企業経営者と同様に臆病なので、筆者がチョット大胆であれば、「12儲かるか10損するか、確率が五分五分」の投資案件にありつくことができるからです。
「反対のリスク」を併せて持つと、リスクが消える
確率的には儲かるとしても、たまたま運悪く、買った株が値下がりする可能性は十分にあります。そこで、損をしたくなければ「多くの銘柄の株に少しずつ投資する」という手法が選択肢となります。確率的に儲かるものを多数持っていれば、大きく儲かる株と小さく損する株があって、合計では儲かる確率が高いでしょう。一気に買うのではなく、毎月少しずつ買えば、高いときも安いときも買うことになるので、「高いときに一気に買って大損した」というリスクも避けられます。
重要なのは「株価がバラバラの動きをする銘柄を持つ」ことです。輸出企業の株だけだと、100社分持っていたとしても、円高になってすべてが値下がりする、というリスクがあるからです。
バラバラな動きをするよりさらによいのが、反対の動きをする銘柄を両方持つことです。輸出企業の株と輸入企業の株を両方持てば、ドル高のときには輸入企業の株が値下がりするけれども、輸出企業の株が値上がりするので大丈夫ですし、ドル安のときも同様に大丈夫なので、リスクを大きく引き下げることができるのです。
輸出企業の株は、投資家たちが「ドル安になると損をするから、買いづらい」と考えて割安に放置されやすく、輸入企業の株も、投資家たちが「ドル高になると損をするから、買いづらい」と考えて割安に放置されやすいとすれば、割安の株を2つ買うことができ、しかも自分にはリスクがあまりない、という望ましい状況が実現できるわけです。
住宅購入資金を「REITで作る」賢い方法
輸出企業に勤めている人は、ドル高になると勤務先の業績が改善してボーナスが増えるでしょうが、ドル安になるとボーナスが減りかねません。そのリスクに備えるには、輸入企業の株を持っておけばいいのです。ドル安になると輸入企業の株価が上がり、ボーナスの減少を補ってくれるでしょうし、ドル高になればボーナスが増えるので、持ち株の値下がりは気にならないでしょう。
輸出企業に勤めている人は、自社の様子やライバル輸出企業の様子がよくわかるので、知らない輸入企業の株よりも自社株やライバルの株を買いたくなるかもしれませんが、リスクを減らすという意味では、輸入企業の株を買うほうがはるかにいいですね。
住宅の購入を考えて資金を貯めている人には「貯めている間に住宅価格が高騰してしまい、いつまでも買えない」というリスクがあります。
可能なら、資金が貯まるたびに住宅を100分の1ずつ購入していきたいのですが、それは無理ですね。それなら、次善の策として「不動産会社の株を買う」という選択肢があります。不動産が値上がりするときには不動産会社の株価も上がるでしょうから、頭金の用意が難しくなるというリスクが減りますから。実際には、不動産会社の株よりもREITという金融商品のほうが住宅価格に近い値動きをするので、そっちがさらにいいかもしれませんね。
学者の定義では「リスク=不確実性」。一般の理解とは違うが…
以下は、余談です。一般人にとってリスクというのは「損をする可能性」のことですが、学者の定義するリスクというのは、「儲かるか損するかわからない状態」のことです。つまり、詐欺商品を買うのはリスクではないのですね(笑)。
あとは、リスクは嫌なものなので、リスクのある商品を買うときには期待値がそれなりにプラスでなければならない、と教科書は教えています。これを学んだ投資家たちも、同じように考えているわけです。
カジノで遊んでいる客は期待値がマイナスの賭けをしているので、勉強不足ということかもしれませんが、まあ楽しければよし、ということにしておきましょう(笑)。
本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
塚崎 公義
経済評論家
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