(※写真はイメージです/PIXTA)

持ち家派の多くの人が抱えている「住宅ローン」。35年という長い期間、返済を続けていくなかで、想定外のリスクが発生することも考えられますが、「住宅ローンの本質を正しく理解することで各種のリスクにどう対処すればよいか分かるようになる」と、住宅ローン・不動産分野で活躍するブロガーであり、公認会計士の千日太郎氏は言います。千日氏の著書『住宅破産』(エムディエヌコーポレーション)より、詳しく見ていきましょう。

なぜ「ボーナス払い」がダメなのか?

中でも重要なのは、ルール①の毎月の返済は「手取り月収の4割以下でボーナス払いなし」です。これは金融機関が行う審査基準の「返済負担率」に似た考え方ですが、そこからさらに収入減のリスクを加味してブラッシュアップさせた基準です。

 

返済負担率とは、債務者の税引き前の年収(額面年収)に対する1年間の返済金額の総額の割合であり、次の計算式でそのパーセンテージを求めることができます。

 

・返済負担率=1年間の返済総額÷額面年収×100

 

住宅ローンの審査において、返済負担率の上限を45%以内としている金融機関が多いですが、これはあくまで上限です。年収が低い人は30%くらいに上限が引き下げられる場合もあります。また、返済負担率の計算式は額面年収をベースにしていますので、現時点で支給されているボーナスも住宅ローンの返済原資とする考え方です。しかしボーナスは業績が悪い年には支給されないこともあります。コロナ環境下では収入が減ってしまう潜在リスクが高いのだということを忘れてはいけません。

 

毎月の返済額は自分が相当のハンデを負っていても継続できるレベルにすることをお勧めしています。つまり、ボーナスを原資として計算する金融機関の審査の基準はその点で若干ですが「ぬるい」のです。そこでわたしは次のような計算式をお勧めしています。

 

・4割≧ボーナス払いなしの毎月返済額÷手取り月収

 

一般的に手取り月収の4割を住宅ローンに使い、残りで他の生活費を賄うのは、実際にやるとなると少し厳しい割合です。平時にはボーナスも使って返済しても構いませんがボーナスが出ない前提でも毎月の返済を続けることができるかを判断して下さい。

 

実際に住宅ローンを組む場合もボーナス払いはお勧めしていません。ボーナス払いとは、ボーナス月に多くの支払いをする代わりにその他の月の返済額を少なくするものです。そもそも支給されたボーナスを口座に残しておけば、別にボーナス払いにする必要などないのです。

 

ボーナス払いのメリットはその分毎月の返済額を減らせることにありますが、減らした分はボーナス月に返済するのですから厳密にはメリットとは言えません。これに対してデメリットは、通常月に口座残高がマイナスになってしまう可能性がある人は、もしボーナスが出なかったときに返済が滞ってしまう可能性が高いことです。

 

わたしは住宅ローンやマイホーム購入の相談に乗る機会が多いのですが、「年収に占めるボーナスの割合が高いのでボーナス払いにしてもいいですか?」「公務員でほぼ確実にボーナスが出るのでボーナス払いにしていいですか?」と聞かれることがあります。どちらも答えは「NO」です。

 

相談者にとっては、ボーナス払いにしたことによって「減った毎月の返済額」が無理のない毎月の返済額なのです。また、毎月の住宅ローン返済額によって口座残高が底をついてしまうのであればそもそも家計に問題があるのです。

 

またボーナス払いのボーナス月以外の返済額は少額となり元本が減らないため、その期間と元本に利息がかかることから、ボーナス払いなしの場合よりもわずかに利息額が多くなってしまうのです。ボーナス払いは、クレジットカードで大きな買い物をしたときの支払いを「ボーナス一括払い」にする使い方がお勧めです。分割払いにすると利息がかかりますが、ボーナス一括払いには利息がかからないカードもあるからです。それにポイントも付与されますので「お得」です。

 

35年420回続けなければならない長期間の固定的な住宅ローンの支払いを変動要素のあるボーナスありきで計画するのはお勧めしません。臨時の大きな買い物の支払いにボーナスを充てる方が「ボーナス」という収入の性質にもマッチしているのです。

 

 

千日 太郎

オフィス千日 代表社員
 

 

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※本連載は、千日太郎氏による著書『住宅破産』(エムディエヌコーポレーション)より一部を抜粋・再編集したものです。

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千日 太郎

エムディエヌコーポレーション

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