気楽な独身50代、自由な毎日を謳歌していたが…
都内の中堅企業に勤務する山田さん(仮名)。勤務先は一般に名前の知られたところではなかったが、業界内では知る人ぞ知る有名企業で、部長職にある50歳の山田さんの年収は軽く1,000万円を超えている。
山田さんはずっと独身で子どももいない。最近、ようやく結婚しようと考えた相手が現れたが、その後女性から別れを告げられ、以降、1人で生きることを覚悟したという。
「別れる、ついていけない、といわれたのはタワマンが理由です」
山田さんはタワマン暮らしにあこがれていて、50代になったら転居しようと考えていた。目星をつけたタワマンは、ワンルームの家賃25万円。自身の年収から、余裕で暮らせると考えていた。
『令和4年分 民間給与実態統計調査』(国税庁)によると、正規社員の平均給与は約523万円(非正規社員の平均給与は約201万円)。平均よりもはるかに多い給料をもらっているのだから、当然かもしれない。
結婚話が出た途端、彼女が豹変
そのときの山田さんは、交際期間およそ1年の同い年のバツイチ女性と、けじめをつけてタワマンで結婚生活を…と考えていたそうだが、相手の女性にその話をしたところ、激怒されてしまった。
「〈いい年をして、なにを考えているの!?〉と大変な剣幕でした。喜んでくれると思ったのですが…」
彼女はタワマンに住むことについて「お金をドブに捨てるようなもの」と大反対し、「将来のことを考えて、もっと節約を心がけるべき」と山田さんに詰め寄ったという。
それからが大変だった。彼女は「結婚するのだから」といって、山田さんのお金の使い方に干渉しはじめたのだ。
「これまで散々私におごらせてきたのに、〈結婚〉の文字が出たら豹変ですよ。タワマンへの引っ越しはおろか、友達と飲み歩くことまでいちいち口出ししてきて、人間、こんなに変わるのかと思いました」
自分のペースで好きに暮らしてきた山田さんは、結婚の話を持ち掛けたことに後悔した。しかし、彼女のほうもそれを悟ったのか、結婚式場のパンフレットの束を山田さんのマンションに運び込むなどして、グイグイと迫ってきた。
双方とも50代で、きちんと仕事にもついている。これから子どもを持つこともなく、親も亡くなっていて介護も不要。ローンで家を買うのではなく、賃貸で好きなところに暮らしたい。山田さんとしては、若いカップルとは違う自由な結婚生活を思い描いていたのに、彼女はそうではなかったようだ。
ところがある日、相手女性から突然別れを告げられた。山田さんの逃げ腰に腹を立て、婚活アプリに登録したところ、もっと条件のいい相手とマッチングしたのだという。
「正直ホッとした部分も大きかったですが、それでも精神的なダメージはありましたね」
山田さんは寂しさを覚えつつも、ひっそりと単身、夢のタワマンへと引っ越していった。
マッチングアプリの相手に騙され、借金1,000万円
ところが、傷心もなんのその、憧れだったタワマン生活は毎日にハリをもたらした。素晴らしい眺望や利便性の高い周辺環境で、生活のモチベーションは爆上がり。自宅近くのおしゃれな店で食事をとり、週末は自宅でワイン。理想の暮らしに心は弾んだ。
半年ほど過ぎ、生活にもすっかり慣れたとき、山田さんは自分が暮らすタワマンの前に、別れた彼女が立っているのを見て言葉を失った。しかし、彼女のほうは山田さんの顔を見るなりボロボロ泣き出した。
「マッチングアプリの相手に騙されて、1,000万円の借金を背負ったというのです」
金融詐欺だった。
「同僚や後輩を誘ってしまったことで会社にいられなくなり、家賃が払えずマンションも追われ、どうしようもない状況に追い込まれてしまったというんです」
山田さんは、住む場所もお金もない彼女の借金を肩代わりした。彼女のほうは、山田さんの部屋に身を置きながら仕事を探していたが、なかなか決まらない。そのうち、ストレスのせいか、寝込むことが増えてきた。
山田さんは、パジャマ姿で申し訳なさそうにしている彼女を追い出すこともできず、ぼんやり考えた。
「この状況を考えたら、タワマンから引っ越さなきゃかなぁ…」
懸念は費用面だった。いままではどんぶり勘定でも右肩上がりに預金残高が増えていたが、家賃を払いながら彼女の生活費や治療費を負担していると、残高は緩やかに目減りしていく。当然だが、彼女からの1,000万円の返済のめどもまったく立たない。
「結婚を考えていたときは、共働きでゆとりある老後を送るという見通しが、なんとなく見えていました。しかし、状況は大きく変わりました。友人は〈なんで彼女を追い出さないのか〉と呆れますが、これは自分の身に降りかかった人でないとわからないでしょう。行き場のない人を追い出すことは、ちょっとやそっとじゃできませんよ。もし仮に追い出したとしても、あまりに後味が悪いのではないかと…」
「結婚を考えていた当時のような気持ちは残っていないのですが、これって年齢からくるあきらめみたいなものですかね…」
山田さんはその後、下町のマンションへ彼女と一緒に転居した。
「タワマンがよく見える場所なんですよ」
また暮らせるようになったら、タワマンに暮らしたいと山田さんはいう。
「そのためにも、一生懸命働かないとですね」
山田さんがタワマンに戻れる日は来るのだろうか。
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