前回は、アパート経営の利益最大化のために追加すべき設備を紹介しました。今回は、賃貸アパートの「塗装工事」を検討する際の着眼点について説明します。

一口に塗装工事といっても費用は「ピンキリ」

<外装工事のポイント>

アパートを長期で保有する場合、保有期間中に一度は経験するのが、外壁塗装や屋上防水などの大規模修繕です。

 

中古で物件を取得した方はもちろん、新築(建築)当時から物件を所有されている場合も、築後15年ほど経てば相応の劣化がありますので「そろそろかな」と考えている方も多いのではないでしょうか。

 

外装工事は多額の費用がかかるため失敗が許されない工事となります。筆者の会社では、オーナーさんの運用方針により「復旧工事」「アップグレード工事」を区別してご提案しています。ここでも費用対効果を意識することが大切です。

 

塗装工事での「復旧工事」の例としては、さびの進行を止めるための塗装や、屋上のシート防水の破れなどを補修する工事があります。第2回でお伝えした、マイナスをゼロに戻す工事です。「アップグレード工事」とは、プラスαを求め、収益性や資産価値のアップを狙うものです。外壁全体の塗装(「復旧」の意味合いが大きい一度塗りは除く)や、屋上防水の方法を塗装方式から、シート防水方式に変更するといった工事です。

 

優良業者を見つけるのはもちろんですが、実際に工事に取り掛かる場合にポイントがいくつかありますので、塗装工事と防水工事の二つに分けて説明いたします。

 

●塗装工事

塗装工事で重要なのはカラーシミュレーションです。カラーシミュレーションとは、コンピューターで色を指定し、施工前の段階で完成に近い形で色合いを確認できるものです。色彩感覚は人によって大きく違いが出るものです。また、物件個別で合う色、合わない色があります。営業マンへヒアリングするため、少なくとも5パターン程度のサンプルを作成してもらいましょう。作成方法は、下記のように四つあります。

 

【カラーシミュレーションのメリットとデメリット】

①塗装会社に頼む
メリット……費用がかからない
デメリット……シミュレーションのクオリティーが低い場合がある


②塗料メーカーに頼む
メリット…… 費用がかからない。塗料の品番が指定できるので、失敗が少ない
デメリット……小規模だと受け付けてくれない


③カラーコーディネーターに頼む
メリット……色に対するセンスがなくてもよい
デメリット…… 費用がかかる。物件固有の賃貸需要を無視すると、入居希望者ニーズと一致せず、無駄になる


④自分でコーディネートする
メリット……費用がかからない
デメリット……入居希望者のニーズと一致せず、失敗する可能性が高い

 

特にお薦めしたいのが、②の塗料メーカーが無料でシミュレーションを作成してくれるカラーシミュレーションサービスです。塗料メーカーが作成するため塗料の品番指定ができ、失敗が少なくなります。

 

また、①~④に加え専業のカラーコーディネーターや建築士の方にシミュレーションをお願いする方法もあります。筆者の会社では顧問建築士の先生に、物件ごとにシミュレーションを依頼しております。先日も昭和47年築の物件を塗装するため、20パターンのシミュレーションを作成してもらい実施工したところ、シミュレーション通りに仕上がりバリューアップに成功しました。塗装工事の順番としては、カラーシミュレーション作成→仲介会社へのヒアリング(10社程度)→色の決定→施工、です。

 

また塗装工事と一口に言っても、吹き付け塗装かローラー塗装か、一度塗りか三度塗りか、塗料はどんなものを使うのかによって金額が大きく変わります。その選択は物件の運用方針によって判断します。PM会社は、あくまでオーナーさんの代理という立場ですので、運用方針に沿った施工レベルでのご提案は非常に重要なポイントとなります。

目先の判断で施工すると、費用対効果が低くなる!?

では、ここから運用方針による施工方法の違いについてお伝えいたします。大きく分けると短期保有なのか、長期保有なのかという違いです。

 

5~10年程度の短期保有後の取り壊しが前提の塗装工事の場合は、過剰な工事は必要ありません。保有期間中の入居率の低下・雨漏りなどがないレベル(復旧)程度の工事で十分です。筆者の会社では塗装コストを抑えるために、5年以内の売却を前提とした場合は一度塗りで対応しています。注意点としては、塗装回数が一度なので元の色に近い色調で施工するということです。なぜなら被膜が薄くなり、下地が見えて汚らしくなってしまうからです。そのため、使える色は限られます。

 

20年程度の長期保有の場合においては、「アップグレード」も視野に入れ工事をします。「アップグレード工事」では色調に幅があり自由に色を選べます。ただし、トレンドに左右されるような色を使用してしまうと年数が経過していく中で古臭いイメージになってしまいます。入居率低下の原因にもなってしまいますので注意が必要です。長期保有の塗装工事は短期保有に比べ長期的な機能維持が求められますので、塗装回数は三度塗りが望ましいでしょう。

 

「古臭くなったから(薦められたから)塗装しよう」と目先の判断で施工すると「費用対効果」の低い投資になってしまいます。必ずどんな目的で施工するのかを考え、その運用方針に則った施工方法で工事を行うことが重要です。また、塗装の施工提案を行っている管理会社であれば実際の物件の仕上がりを見ることができるため、事前に打診するのも良い方法でしょう。

 

【図表 運用方針で変わる塗装工事事例】

本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『改訂版 空室率40%時代を生き抜く!「利益最大化」を実現するアパート経営の方程式』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本連載は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資・経営(管理運営)の成功を保証するものではなく、本連載を参考にしたアパート事業は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本連載の内容に基づいて経営した結果については、著者および幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。なお、本連載に記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時のものであり、今後、変更されることがあります。

空室率40%時代を生き抜く!  「利益最大化」を実現する アパート経営の方程式

空室率40%時代を生き抜く! 「利益最大化」を実現する アパート経営の方程式

大谷 義武 太田 大作

幻冬舎メディアコンサルティング

アパート経営は今までと同じやり方では利益が出ない時代へと状況が大きく変わってきています。歴史上初めての大きな転換期を迎えていると言っても過言ではありません。だからこそ今のうちに、アパート経営を見直し、しっかりと…

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