裁判所が「売主が設定した特約は無効」と判断した根拠
このような事案について、裁判所は、結論として
と述べて、瑕疵担保責任を3ヵ月に制限する特約は無効であると判断しました。
裁判所が、このような期間制限の特約を無効と判断した理由としては、単に事業者だからという理由だけではなく、下記のように述べて、従前の土地の利用態様や取引時の売主の説明が事実と相違していたという事情を重視しています(被告とは、本件の売主です)。
「被告代表者の兄であるBが、本件土地に皮革等の燃え殻を埋設し、その後、被告代表者が、本件土地を買い受け、被告に対し、本件土地を売却した」
「被告は、平成20年1月31日の本件売買契約の締結時、原告X1の妻から、本件土地の従前の利用方法や埋設物の有無等の確認を求められたのに対し、居住のみに使用しており、問題はない旨回答し、埋設物の可能性を記載することなく、原告X1に対し、物件状況等報告書を交付したものの、
その後、同年7月、環境基準を超える鉛が検出されるとともに、同年8月25日、皮革等の燃え殻が多数埋設されていることが判明したため、
原告X1が、同年10月16日、被告に対し、本件売買契約を解除するとの意思表示をしたことが認められるのであって、原告X1は、適宜、本件土地の調査等を尽くしたというべきである」
したがって、法人等の事業者が不動産の売主となる場合の瑕疵担保責任については、期間制限を1年以下に設定する場合、従前の土地利用や取引の経緯に注意をする必要があるといえます。
売主「自社は宅建業者にはあたらない」と反論も…裁判所は“一蹴”
なお、売主側は、裁判では、反論として
「自社は貴金属、宝石類の卸売業等を目的とする株式会社であって、不動産の売買を業とするものではないから、消費者契約法の事業者にはあたらない」と主張しました。
これに対して、裁判所は
と述べて売主の主張を一蹴していますので、不動産の売買の場合では、売主が不動産業者かどうかは消費者契約法の観点では関係がないということになります。
※この記事は、2019年8月31日時点の情報に基づくものです(2024年12月20日再監修済)。
北村 亮典
弁護士
大江・田中・大宅法律事務所
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