金融円滑化法の失効後も、金融機関の対応は変わらず
金融庁は、金融円滑化法の失効にあたって、失効により急な貸し渋りや貸しはがしが生じないよう、「中小企業金融円滑化法の期限到来に当たって講ずる総合的な対策」を作成し、公表しました。
その中で、「金融機関による円滑な資金供給の促進」に関しては、以下のような措置がとられています。
①金融検査マニュアル等に、金融円滑化法終了後も、貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めることを明記し、検査・監督で徹底する
②金融業界は、円滑化法終了後も貸付条件の変更等に真摯に対応していく旨を申合せする
③金融機関に、貸付条件の変更等の実施状況の自主的な開示を要請する
これを受けて、各金融機関も、金融円滑化法失効後においても、これまでどおりの対応を継続する旨を表明しており、一定の条件を満たせば貸出条件の変更には応じるものとしています。
特に地銀、第二地銀、信用金庫等の地域金融機関としては、地場に密着して営業を行っているので、急に手のひらを返して突き放すような貸し剥がしは行うことはできないという事情もありました。そのため、金融円滑化法の失効後も、貸付条件の変更等は継続して実行されています。
そして、アベノミクスによる景況改善の効果もあり、金融円滑化法が2013年3月末に失効した後も、倒産件数は増えておらず、むしろ微減している状況です(図表)。
【図表 全国企業倒産集計 2013年報 年別件数推移】
淘汰されるべき企業が「隠れ不良債権」として存続
しかし、金融円滑化法の施行により、倒産を回避した中小企業のうちには、業績回復の見込みがなく、本来であれば廃業、倒産等により淘汰されるべき企業も多く存在しました。にもかかわらず、これらの企業は、金融機関から、借入金返済の支払猶予を受けることにより、業績回復の見込みがないままに、いたずらに延命されているとの批判がありました。
また、金融円滑化法の施行に伴い、金融検査マニュアル(金融庁の金融機関に対する金融検査の指針をまとめたもの)が改定され、貸出条件緩和債権の基準が緩められました。その結果、リスケを行っても、一定の用件を満たせば、要管理債権には該当しないこととなり、不良債権の判定基準が緩和されました。
その結果、従来であれば、不良債権となっていたものがそうならず、それらが「隠れ不良債権」、「不良債権予備軍」となっているという指摘がなされています。