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事業承継の大きなネック 社長の「個人保証」をどうするか?

引き続き、経営者が引退を考えた際に、事業承継か廃業かを判断するための基準をお伝えします。今回も「経営者保証ガイドライン」について、その詳細と、5つ目の判断基準について見ていきます。※本連載は、松村総合法律事務所の弁護士、松村正哲氏、税理士法人髙野総合会計事務所シニアパートナーの小宮孝之氏、株式会社ストライク代表取締役の荒井邦彦氏の共著『よくわかる中小企業の継ぎ方、売り方、たたみ方』(ウェッジ)の中から一部を抜粋し、会社経営の「卒業」を主なテーマとして、事業承継 or 廃業の判断基準などをご紹介します。

2014年に適用が開始された「経営者保証ガイドライン」

3 経営者保証ガイドラインの概要

経営者保証ガイドラインの概要は、以下の通りです。

 

中小企業の経営者や第三者の個人保証について、以下の準則を定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や、早期事業再生等を応援します。

 

①会社の経営状態について、次の対応がなされていることを要件に、経営者の個人保証を求めないこと

 

•法人と経営者との関係の明確な区分・分離

•財務基盤の強化

•財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保

 

②多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等を、破産手続の場合の自由財産現金99万円に加え、年齢等に応じて残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること

 

③保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること

財務基盤の強化や適時適切な情報開示等が前提

4 事業承継時に個人保証を引き継がないことができる

経営者保証ガイドラインにおいては、事業承継時の対応として、以下の通り定められています。

 

①会社及び後継者における対応

(イ)会社及び後継者は、債権者からの情報開示の要請に対し適時適切に対応する。特に、経営者の交代により経営方針や事業計画等に変更が生じる場合には、その点についてより誠実かつ丁寧に、債権者に対して説明を行う。

(ロ)会社が、後継者による個人保証を提供することなしに、債権者から新たに資金調達することを希望する場合には、会社及び後継者は前記3①に掲げる経営状況であることが求められる。

 

②金融機関等における対応

(イ)後継者との保証契約の締結について

債権者は、前経営者が負担する保証債務について、後継者に当然に引き継がせるのではなく、必要な情報開示を得た上で、経営者保証の機能を代替する融資手法を踏まえつつ、保証契約の必要性等について改めて検討する。

 

その結果、保証契約を締結する場合には、適切な保証金額の設定に努めるとともに、保証契約の必要性等について会社及び後継者に対して丁寧かつ具体的に説明することとする。

 

(ロ)前経営者との保証契約の解除について

対象債権者は、前経営者から保証契約の解除を求められた場合には、前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を有しているか否か、当該保証契約以外の手段による既存債権の保全の状況、法人の資産・収益力による借入返済能力等を勘案しつつ、保証契約の解除について適切に判断することとする。

 

したがって、経営者保証ガイドラインによれば、会社の経営状態が前記3①に掲げるような一定の要件を満たしていれば、社長交代に当たって、後継者が個人保証を引き継がないことも可能となりました。

後継者を支える社内の環境作りも重要

事業承継or廃業の判断基準

⑤事業承継後も、役員、従業員からの協力が得られるか

 

その他、事業承継後に会社に残る役員、従業員から、承継後も協力が得られるかということも重要です。

 

中小企業の場合、社長と会社の役員、従業員の距離感が近く、強い信頼関係で結ばれているのが通常です。たとえ社長の子供であっても、役員、従業員から、社長に対するのと同様の協力をしてもらえるとは限りません。事業承継を円滑に進めるためには、後継者が社内の役員、従業員から反発を招かずに、信頼関係を構築することができるように段取りを留意する必要があります。

松村総合法律事務所 弁護士

国内有数の大手法律事務所のパートナー弁護士を経て、2015年、「最高のリーガルサービスを、リーズナブルな価格でご提供する」を事務所の理念として、松村総合法律事務所を開設。
事業承継、M&A、事業再生を主要な業務としつつ、企業法務全般を取り扱う。
2008年~2012年、駿河台大学法務研究科非常勤講師(倒産法)を務める。
主要な受賞歴として、Chambers Global 2006、及びChambers Global 2005-06において、Corporate/M&Aの分野で高い評価を得る。
多数の会社更生、民事再生等の案件も手がけており、三光汽船のDIP型会社更生事件では、法律家アドバイザーを務めた。

主な著書・論文に、『中小企業の継ぎ方、売り方、たたみ方』(ウェッジ)、『事業再生の迅速化』、『倒産法全書 上巻・下巻』(いずれも商事法務)、『論点体型 会社法4 株式会社Ⅳ(定款変更・事業譲渡・解散・清算)、持分会社』(第一法規)、『総特集 条件緩和企業の債権管理・回収』(『ターンアラウンドマネージャー』銀行研修社)他、多数。

著者紹介

税理士法人髙野総合会計事務所 シニアパートナー 公認会計士・税理士

法人の会計税務コンサルティングに精通しているFAS部門に所属。事業再生やM&A、移転価格税制、税務会計コンサルティング全般のほか、中小企業の事業承継、経営コンサルティングなど幅広いジャンルのサポートを行っている。

著者紹介

株式会社ストライク 代表取締役 公認会計士・税理士

1997年にM&A仲介・助言専門会社、株式会社ストライクを設立し、代表取締役に就任。インターネット上に日本初のM&A市場「SMART」を設立し、数多くの中小企業のM&Aを仲介するほか、企業評価やデューディリジェンスに携わる。

著者紹介

連載事業承継、M&A、廃業・・・会社経営からの「卒業」

本連載は、2015年1月20日刊行の書籍『よくわかる中小企業の継ぎ方、売り方、たたみ方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

よくわかる中小企業の継ぎ方、 売り方、たたみ方

よくわかる中小企業の継ぎ方、 売り方、たたみ方

松村 正哲,小宮 孝之,荒井 邦彦

ウェッジ

昨今では社長の高齢化や、産業構造の転換による苦しい経営に悩む中小企業が増えています。それゆえ事業承継、M&A、廃業の準備を進めることが、日本全体の重要課題といえましょう。 しかし、そのような中小企業の悩みに応える話…

 

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