2014年に適用が開始された「経営者保証ガイドライン」
3 経営者保証ガイドラインの概要
経営者保証ガイドラインの概要は、以下の通りです。
中小企業の経営者や第三者の個人保証について、以下の準則を定めることにより、経営者保証の弊害を解消し、経営者による思い切った事業展開や、早期事業再生等を応援します。
①会社の経営状態について、次の対応がなされていることを要件に、経営者の個人保証を求めないこと
•法人と経営者との関係の明確な区分・分離
•財務基盤の強化
•財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保
②多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等を、破産手続の場合の自由財産現金99万円に加え、年齢等に応じて残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること
③保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること
財務基盤の強化や適時適切な情報開示等が前提
4 事業承継時に個人保証を引き継がないことができる
経営者保証ガイドラインにおいては、事業承継時の対応として、以下の通り定められています。
①会社及び後継者における対応
(イ)会社及び後継者は、債権者からの情報開示の要請に対し適時適切に対応する。特に、経営者の交代により経営方針や事業計画等に変更が生じる場合には、その点についてより誠実かつ丁寧に、債権者に対して説明を行う。
(ロ)会社が、後継者による個人保証を提供することなしに、債権者から新たに資金調達することを希望する場合には、会社及び後継者は前記3①に掲げる経営状況であることが求められる。
②金融機関等における対応
(イ)後継者との保証契約の締結について
債権者は、前経営者が負担する保証債務について、後継者に当然に引き継がせるのではなく、必要な情報開示を得た上で、経営者保証の機能を代替する融資手法を踏まえつつ、保証契約の必要性等について改めて検討する。
その結果、保証契約を締結する場合には、適切な保証金額の設定に努めるとともに、保証契約の必要性等について会社及び後継者に対して丁寧かつ具体的に説明することとする。
(ロ)前経営者との保証契約の解除について
対象債権者は、前経営者から保証契約の解除を求められた場合には、前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を有しているか否か、当該保証契約以外の手段による既存債権の保全の状況、法人の資産・収益力による借入返済能力等を勘案しつつ、保証契約の解除について適切に判断することとする。
したがって、経営者保証ガイドラインによれば、会社の経営状態が前記3①に掲げるような一定の要件を満たしていれば、社長交代に当たって、後継者が個人保証を引き継がないことも可能となりました。
後継者を支える社内の環境作りも重要
事業承継or廃業の判断基準
⑤事業承継後も、役員、従業員からの協力が得られるか
その他、事業承継後に会社に残る役員、従業員から、承継後も協力が得られるかということも重要です。
中小企業の場合、社長と会社の役員、従業員の距離感が近く、強い信頼関係で結ばれているのが通常です。たとえ社長の子供であっても、役員、従業員から、社長に対するのと同様の協力をしてもらえるとは限りません。事業承継を円滑に進めるためには、後継者が社内の役員、従業員から反発を招かずに、信頼関係を構築することができるように段取りを留意する必要があります。