短期売買が多かったことによる上場株式への影響
そして2つ目の理由は、一般NISAの特に上場株式についてであるが、買付があっても短期間での売却も多かった、つまり比較的、短期売買であったことである。一般NISAでは制度が開始された2014年から2022年までの9年間で16.7兆円が売却された。
そのうち上場株式が8.2兆円、投資信託が8兆円売却されており、上場株式が買付の割には売却が膨らんでいた。特に2020年以降は毎年、買付と同規模の売却が上場株式であった[図表4]。
このように売却が多かったことや5年で課税口座に移管されることもあり、2022年末時点で上場株式の残高は4.4兆円しかなかった。
それでも一般NISAでの上場株式は2022年末に残高が4.4兆円まで膨らんだわけであり、そのほとんどが日本株式だと推測される。しかし、東京証券取引所の「株式分布状況調査」をみると、一般NISAの残高増加に伴って個人の株式保有が増えている様子は確認できない[図表5]。
単純に短期売買が中心で買い持ちが少なかったからと言えるが、3つ目の理由として一般NISAの個別銘柄投資の大半が課税口座からの買い替えで、新規資金はさらに少なかったからとも考えられる。そのため、一般NISAの残高が積みあがっても個人の株式保有が増えなかったのではないだろうか。
新NISAでも日本株への大規模な資金流入は期待薄
一般NISAは非課税期間が5年と短く、しかも損益通算できないこともあり、利益確定売りが出やすかったと思われる。新NISAでは非課税期間が無期限化されたため、一般NISAで多かった上場株式の短期売買が減り、長期保有が増えるかもしれない。
さらに買付枠が広がったため、買付も増え、上場株式の残高が倍増することも見込まれる。
しかし、残高が増えたとしても一般NISAと同様に課税口座からの買い替え中心で、新規資金は思っている以上に少ないかもしれない。つまり2022年度末に131兆円ある個人投資家の株式の一部が新NISAに移るだけで、新規資金は限られている可能性がある。
また、新NISAでさらに増えると思われる投資信託の買付も外国株式がほとんどで、やはり日本株式には限定的になりそうである。
つまり、新NISAでは3つの理由のうち2つ目の短期売買は解決する可能性があるが、他の2つは現行制度の問題というよりも根底に日本株式の投資魅力の問題があるため、新NISAでも残り続けると思われる。
そもそも新NISAでは分散投資の観点から日本株式への集中投資が推奨されない面もあるが、集中投資するにも投資魅力が高くないと投資先として選ばれず買い増しされない。
やはり、多くの個人投資家が集中投資するなら日本株式でなく米国株式を選びがちであり、新NISAでもその傾向が継続すると思われる。それゆえに、新NISAから日本株式への資金流入はあまり期待できないのではないだろうか。
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