無償労働を考慮した男女の収入比較-子育て期は女性が男性を約80万円上回る、専業主婦のピーク時の年収は約500万円

無償労働を考慮した男女の収入比較-子育て期は女性が男性を約80万円上回る、専業主婦のピーク時の年収は約500万円
(写真はイメージです/PIXTA)

今や夫婦のいる勤労者世帯の約7割が「共働き世帯」ですが、家事の負担は妻に偏る家庭が多いようです。その原因として「女性は家庭を守るべき」という固定概念や、「稼ぎが少ないほうが家事をすべき」といった意見が挙げられます。そこで本稿では、ニッセイ基礎研究所の久我尚子氏が、一般労働者の有償労働(給与収入)と無償労働(家事活動の収入換算額)の推計値を合算し、年代による男女の違いを分析することで、子育てに関わる様々な負担感へどう対応すべきかについて解説します。

1――はじめに~稼ぎが少ない方が家事や育児をすべき?家事や育児を収入換算すると?

今や共働き世帯は夫婦のいる勤労者世帯の70.1%を占めるが(総務省「令和4年労働力調査」)、依然として家事や育児の分担は妻に偏る家庭が多い。

 

共働き世帯の1日当たりの家事や育児等の時間は、夫は平均36分の一方、妻は223分で夫の6倍を超える(総務省「令和3年社会生活基本調査」)。なお、6歳未満児のいる共働き世帯では夫は115分、妻は393分である1

 

日本では長らく「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という固定的性別役割分担意識が存在してきたため、共働き世帯であっても家事や育児等の分担は妻に偏りがちなのだろう。

 

[図表1]男女の措定ない給与格差の推移

 

また、「稼ぎが少ない方が家事や育児をすべき」という声もよく耳にする。女性では正規雇用者と比べて賃金水準の下がる非正規雇用者が多く(雇用者に占める非正規雇用者の割合は男性22.2%、女性53.4%、総務省「令和4年労働力調査」)、正規雇用者であっても、その収入は男性の8割程度にとどまる([図表1])。

 

一方で、これらの要因には、固定的性別役割分担意識によって、妻が家庭を重視した働き方を選択する(あるいは、選択せざるをえない)ことでパートタイムで働いていたり、正社員であっても、妻のみが育児休業や時間短縮勤務制度を利用したり、残業を控えたりすることで、夫と比べて賃金水準が下がることなどがあげられる。

 

そもそも収入の多寡で家事の分担は決まるものなのかという疑問もあるが、現状の家事や育児等の無償労働を収入換算し、有償労働である給与収入と合算するとどうなるのだろうか。

 

本稿では、内閣府や厚生労働省等の統計を用いて、男女の状況を比較する。

 


1 参考までに、専業主婦世帯では夫は1日当たり平均34分、妻350分、6歳未満児がいる場合は夫107分、妻564分。

2――年収および家事活動の収入換算額の推計方法

有償労働である給与収入(年収)は、一般労働者の所定内給与額等を用いて下記の式にて推計する。

 

一人当たりの年収=一人当たりの月当たり所定内給与額×12カ月分+年間賞与その他特別給与額

 

なお、一般労働者とは常用労働者(期間を定めずに雇われている者、あるいは1ヵ月以上の期間を定めて雇われている者)のうちパートタイム労働者を除いた労働者であるため、非正規雇用者を含む労働者全体の年収水準と比べてやや高い水準になる。

 

よって、本稿における男女比較は、おおむねフルタイムで働いている男女の違いに注目したものということになる。

 

また、無償労働である家事や育児等の収入換算額には、内閣府「2022年度「無償労働等の貨幣評価」に関する検討作業報告書」において、下記の式にて推計された値を用いる。

 

一人当たりの無償労働の貨幣評価額(年間)=一人当たり無償労働時間(年間)×時間当たり賃金

 

なお、同報告書では、無償労働として、家事活動(家事:炊事や掃除、洗濯、縫物・編物、家庭雑事、介護・看護、育児、買物)に加えてボランティア活動も対象としているが、本稿では家事活動のみを対象とする。

 

また、時間当たり賃金は一般労働者の賃金率を基に複数の手法で推計が実施されているが、本稿では無償労働による逸失利益(市場に労働を提供することを見合わせたことで失う賃金)で評価する機会費用法による値を用いる2

 


2 このほか、代替費用スペシャリストアプローチ(市場で類似サービスの生産に従事する専門職種の賃金で評価する方法)や代替費用ジェネラリストアプローチ(家事使用人の賃金で評価する方法)があるが、現在の日本では、日常的な家事代行サービスの利用が必ずしも浸透しているわけではない状況を踏まえて、本稿では機会費用法による推計値を用いる。

次ページ3――年収推計額と家事活動の収入換算額~家事活動は子育て期の年代の男女差は約200万円にも

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    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年11月21日に公開したレポートを転載したものです。

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