聞いていたら、こんな土地は買わなかった!「17年前に起きた死亡事故」を知らずに1,300万円損した買主が、不動産業者を提訴…裁判所が下した「まさかの判決」【弁護士が解説】

聞いていたら、こんな土地は買わなかった!「17年前に起きた死亡事故」を知らずに1,300万円損した買主が、不動産業者を提訴…裁判所が下した「まさかの判決」【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

自然死ではない事故死などの不慮の事故が物件内において発生した場合「心理的瑕疵がある物件」として、仲介業者は原則、売買の際に説明をする義務が生じます。では、売主も仲介業者も知らなかった「17年前の死亡事故」も告知義務は発生するのでしょうか。弁護士の北村亮典氏が実際の判例を交えて解説します。

裁判所が下した判決は…

不動産業者は「無罪」…その理由は?

結論から言うと、心理的瑕疵、仲介業者の調査・説明義務のいずれも否定しました。

 

この事例で、裁判所はまず、

 

「ある土地において社会的に忌み避けられるような出来事が発生してから一定の期間においては、当該土地につき忌み避けられるべき心理的欠陥があるものとして当該土地に瑕疵があるということができる場合がある」

 

「当該土地の取引に関わる不動産業者は、信義則上、認識し、又は通常の取引過程において容易に認識し得た上記のような出来事の存在につき、取引の相手方に告知すべき義務があるということができる」

 

「もっとも、ある土地において社会的に忌み避けられるような出来事が発生することが必ずしも一般的なことでないことからすると、不動産業者が、当該取引に関わる土地について、積極的に過去においてそのような出来事が存在しなかったかまでをも調査する義務があるということができるものではない」

 

と一般論を述べています。すなわち

 

  • 忌み避けられるべき事件や事故は、一定期間は心理的瑕疵となる
  • 容易に認識できるような事件や事故については説明義務がある
  • 容易に認識できないような事件や事故について、積極的に調査する義務はない

 

としています。

 

そして、本件については、

 

  • 売買契約の約17年前に土地上に建っていた木造(防火構造)2階建ての共同住宅が部分焼損する火災が発生し、同建物に居住していた男性1名が同火災により死亡する本件火災事故が発生したこと
  • 本件火災事故後のまもなく同建物は全て取り壊されたこと
  • 本件売買契約が締結された当時、本件土地は砂利敷きの月極駐車場として使用されていた

 

という事実を前提として、裁判所は、

 

「すでに17年以上が経過した過去の出来事であることに加え、本件火災事故が発生した本件土地上の建物は、本件火災事故後の平成6年4月1日頃には全て取り壊され、本件売買契約締結当時には本件土地は駐車場として使用されていたことが認められる」

 

「そうすると、本件土地上に存在した建物で本件火災事故が発生し死者が出たという事実は、本件売買契約締結当時においては、相当程度風化され希釈化されていたものであって、合理的にもはや一般人が忌避感を抱くであろうと考え得る程度のものではなかったと認めるのが相当である」

 

と述べ、本件においては、約17年前の火災死亡事故の発生という事実は「心理的瑕疵には該当しない」という判断をしました。

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを、北村氏が再監修のうえGGO編集部で再編集したものです。

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